地域医療実習 2005.8.28〜9.2

自治医大5年生の地域医療実習に、A君が1週間来てくれました。

日曜日には、かっとびいぶきマラソンの救護にも参加してくれ、熱中症の人をタンカに載せて消防署の隊員と一緒に救急車まで坂道を搬送してくれました。月曜日は、外来見学とともに、いろんな処置をしてもらいました。午後は往診についてもらいました。火曜日は、午前は大久保出張所の外来をお願いし、午後は吉槻診療所の診察へ。水曜日は午前は検査や外来を見てもらいました。午後は吉槻診療所板並出張所で診察。木曜日は、検査および外来、午後からは後方病院となる病院への見学に行きました。金曜日は、調剤にもトライしてもらいました。


往診にて診察


皮膚びらんの患者さんの処置


寝たきり患者さんへの点滴


床ずれ患者さんの処置


患者さんの爪切り(フットケア大事です)


内視鏡の抜くところだけを指示


お疲れさんどした・・・


病診連携の病院(長浜赤十字病院)


病院連携の病院(市立長浜病院)

地域医療U院外BSL実習レポート

第1週目:大津赤十字志賀病院

1-1) 実習施設と地域の概要

 この施設は、国立療養所比良病院の後、医療を引き継ぎ、平成14年7月1日に開院した、とても新しい施設である。大津赤十字病院と連携をとりながら、救急医療など地域に密着した医療の提供を目指している。
・ 病床数:療養型病床50床を含め計150床、
・ 診療科目:内科・循環器科・消化器科・小児科
外科・整形外科・リハビリテーション科
その他人間ドックや各種生活習慣病健診
・ 外来患者数:1日平均220人
・ 敷地面積:22,540u

  この施設のある志賀町は、人口23,102人、面積71.73km2の南北に長い町で、琵琶湖に面し、約7割を森に囲まれた、森と水に囲まれた町である。平成18年3月20日に、大津市との合併が決まっている。

2-1) 実習内容

・実習予定表
8/22(月) 8/23(火) 8/24(水) 8/25(木) 8/26(金)
午前 オリエンテーション病棟案内紹介 病棟回診(外科系)病棟処置 院長先生面談検査見学 外科外来(新患診療)ポリクリ 病棟回診(外科系)検査実習整形外科外来
午後 処置エコーリンパ節生検外科カンファレンス 手術見学 検査見学手術見学 IVH見学骨折処置 手術見学
その他 当直体験

・実習内容の詳細
実習内容 詳細および成果 自己評価
処置エコー:乳房エコー下にて乳房部腫瘤に対するneedle biopsyを見学し、手技の方法、触診による腫瘤の性状について学んだ。
リンパ節生:オペ室で右頚部リンパ節の摘出を見学した。
外科カンファレンス:入院患者16名の症例検討会に参加し、先生3名による方針決定と3人の医師による連携体制を学んだ。先生に各症例に対し、説明していただいたのでとてもカンファについていくことができた。
病棟回診:先生の指導の下、病棟業務、PCによるオーダーリングの体験、入院患者さんの治療方針について先生と検討をさせていただき、実際の業務に触れさせていただいた。見ているのと、実際にするのは全く違うことを学んだ。緊張感があった。
病棟処置:先生の指導の下、ガーゼ交換、点滴確保をさせていただいた。清潔操作や、手技について熟練が必要だと痛感した。
手術見学:人工膝関節置換術を見学し、外科の先生も整形外科のオペに参加するといった地域医療での先生の幅広い診療体制と広範な知識が必要であることを改めて学んだ。
当直体験:先生と当直させていただき、時間外診療などなかなかBSLでは経験できないことを、身をもって学ぶことができた。
検査見学:午前中に上部消化管内視鏡検査、午後に下部消化管内視鏡検査を見学し、手技を学ぶと同時に、自分が地域に行ってからどのような手技が必要になってくるか学んだ。
手術見学:左環指MP関節皮下脂肪腫φ2cm摘出術を手洗いし、見学した。            
外来実習:県外の他病院にて術後、滋賀県に転居された患者さんに対する診察(初診)を行った。外科系の患者さんへの診察、手術に対する言葉の選び方を学んだ。
IVH見学、骨折処置:IVHの見学、大腿骨外側頚部骨折に対する綱線牽引術を見学した。地域では、大腿骨頚部骨折は頻度の高い疾患であるので、その術前処置を見ることができてよかった。
検査実習:腹部超音波検査を見学後、S先生に被検者になっていただき、腹部超音波検査をやらせていただいた。貴重な経験をさせていただきました、S先生、本当にありがとうございました。
手術見学:虫垂炎緊急手術、肘頭部骨折抜釘術を連続して、見学させていただいた。虫垂は少し穿孔して腸間膜と癒着し、母指大までに腫れていた。

3-1) 考察・感想

common diseaseを中心とした、地域密着型の医療現場での実習は、新鮮でとても有意義な実習であった。滋賀県の先輩にあたる先生方が働いておられるのを見ると、とても刺激になると同時に、将来、自分が先輩方のようになることができるのかと不安にもなった。学生のうちに自分の県の地域医療の現場に行く機会はあまり多くないので、今回の実習から得たものは多かったように感じた。特に、当直を含め、先生の1週間の勤務を見ていることそのものが、今回の実習では最も大切なことだったのではないかと、そして、それをお忙しい中、指導医の先生とずっと行動をともにさせていただき、肌で感じることができたことで、本当にいい実習ができたように思った。
 手技についても、指導医の先生のみならず、院長先生をはじめ先生方皆さんが、ひとつひとつ熱意を持って丁寧に教えてくださり、とてもよく理解できた。金曜日の腹部超音波検査では、時間の合間を縫って、先生に被検者になっていただいた。こんなことまでして下さった先生の期待に応えるべく頑張らねばと思った。
 医師となったときには、患者との接し方など今回見たことが実際やれることができるようにしたいです。売店のおばさんには、「優しさを持ったお医者さんになってください!」と言われた。その言葉を忘れず、将来に向けて、頑張っていきたいと思った。


第2週目:米原市国民健康保険伊吹診療所

2-1) 実習施設と地域の概要

 この施設の位置する米原市は、面積205.06km2、人口32,116人で、日本百名山の1つである伊吹山など約7割が森林に占められた自然いっぱいの地域である。
 伊吹診療所は伊吹山の麓にあり、外来患者は1日平均約70人。30分以内に市立長浜病院、長浜日本赤十字病院といった大きな病院があり、連携をとりながら診療されている。特に、市立長浜病院には開放型病棟があり、診療所と病院との架け橋的役割を担っており、それによって、積極的に在宅医療が行える体制になっている。また、吉槻診療所は、さらに伊吹診療所よりさらに奥地に位置している。
 また、平成18年4月から、畑野先生主導のもと、60床の老健施設、通所リハビリを併設し、包括ケアセンターを設立することになり、在宅介護支援センター「愛らんど」とともに地域医療・福祉の充実がはかられることになった。

2-2) 実習内容

・実習予定表
8/28(日) 8/29(月) 8/30(火) 8/31(水) 9/1(木) 9/2(金)
午前 伊吹かっとびマラソン 外来(主に見学)・処置眼底カメラ 大久保出張所にて外来 外来見学検査実習 検査実習外来処置 検査実習外来処置薬剤分包
午後 訪問診療 吉槻診療所にて外来(中村先生) 板並出張所にて外来(中村先生) 検査実習病院見学
先生、地元の消防隊の方とバレー

・実習内容の詳細
実習内容 詳細および成果 自己評価
伊吹かっとびマラソン:救護班の一員として、先生のもと参加させていただいた。熱中症の選手に対し、アイシングや点滴などを見学させていただいた。貴重な経験ができた。
外来・処置:外来見学と、心電図、点滴、点滴内容・ルートの作成、採血、尿検査、X線撮影、筋注、局注を先生、看護師さんに教えていただきながら行った。実践的な手技をできて、緊張したが、とても得たものが多かった。眼底カメラの撮影もさせていただいた。
訪問診療:午後から7件の訪問診療に付き添わせていただいた。訪問を行って、もう数年になる患者さんもおられた。家族の見ている緊張感のなか、点滴、ガーゼ交換などの処置をした。介護保険の普及により、リクライニング機能付きベッドなどを備えておられる家庭も普通になっているなという印象を受けた。
大久保出張所:時間に余裕があったので、診察を行わせてもらい、地域の方々と触れ合い、地域医療の現場を肌で感じた。先生のようには、うまくできなかった。まだまだ、未熟さを感じた。
吉槻診療所:天候の悪さも相まって、患者さんが数人しか来られなかったので、マイクロ波と、腰の牽引を体験実習した。
検査実習:患者さんの協力のもと、胃カメラの引抜き時の操作、腹部エコーの胆石描出操作をさせていただいた。また、看護師さんに被検者になっていただき、頚部エコーを行わせていただいた。初めての頚部エコー操作にも関わらず、快く協力していただいた。これも、いい思い出となった。
板並出張所:これぞ出張所といわんばかりのプレハブの出張所、検査機器は何もなかった。先生はこれでも改装したと言っておられた。ここで、診察をさせていただいた。正直、想像以上の出張所でびっくりした。この診療所は、写真に撮るべきであった…と後悔した。
病院見学:市立長浜病院と長浜日赤病院に、先生の紹介された患者さんのお見舞いに同行し、病院見学をさせてもらった。その後、病院主宰の脳卒中についての講義に参加させていただいた。
薬剤分包:看護師さんの指導の下、薬剤の分包を実際にやらせていただいた。こういうことを知っておくことは必要だと感じた。

3-2) 考察・感想

 第2週目は地域の診療所での実習ということで、先週の地域の病院での実習との比較もでき、大変良かった。診療所では、病棟が無い代わりに、訪問診療を積極的にやっておられ、本当に町医者という感じであった。医師1人の診療所である伊吹診療所において、もっとも感じたのは、"患者さん最優先の診療"であった。大学の実習では、患者さんの持つ疾患に対し、最先端の技術による最も治療効果の高い治療をすることが一番重要だと考えがちになってしまっているが、診療所では必ずしもそうではなく、患者さんの話をきちんと聞いてあげる、これが治療の半分くらいを占めるようなことが少なくないと感じた。患者さんの病気を診るのではなく、患者さんを診る、という言葉の意味を教えてもらったような気がした。さらに、患者さんが診療所に来て、何を求めているのかについて考えるいい機会になった。
 伊吹診療所では、薬袋の表紙に内容薬剤の説明を印刷するようにしておられ、袋の中に、説明の紙を同封しているときに比べ、患者さんから薬について尋ねられることがすごく減ったようで、こうした患者さんのための工夫は、僕自身が診療所に行ったときにやることができればと思った。

2) 謝辞

日赤志賀病院、伊吹診療所、吉槻診療所の先生方、看護師さん、その他のスタッフの皆様、本当にありがとうございました。この場を借りて、御礼の言葉を書かせていただきます。この2週間の実習を、今後の学生生活に活かし、頑張っていきたいと思います。

3) 参考文献

・ 大津赤十字志賀病院パンフレット
・ THE OFFICIAL WEBSITE OF MAIBARA CITY  http://www.city.maibara.shiga.jp/
・ 米原市伊吹診療所HP  http://www.biwa.ne.jp/~hatabo/