滋賀医科大学 患者様訪問実習 1回目・2回目

 第1回訪問 2006.3.3


滋賀医大が実施する医療人GPプログラムが始まっています。これは、4回生と1回生がペアになって、在宅で療養されている患者様、ご家族の家を訪問し、お話を聞く(インタビュー)というものです。訪問する患者様・ご家族と、大学・学生さんの間で、契約を結び、今後2ヶ月に1回、年6回訪問することになっています。

当方でも、初めての受け入れで、しかも3組同時でした。

当方で予定したプログラム

14:00 オリエンテーション・自己紹介(名前、出身、クラブ、興味のあること、どうして医師を目指したのか)
14:30 患者様宅にて、お互いの紹介。学生さんと患者・ご家族との話し合い。(看護師、見学に来ているドクターにファッシリテーター(助言者)をお願いしました)
15:30 お迎え
16:00 ミーティングし、感想を話し合う
16:30 終了。送迎。

畑野自身の感想

 始めのオリエンテーション、自己紹介で、「患者さんにはどんな質問をするつもりですか?」と聞いた時、「世間話をしてこいと言われました」との返事でしたので、大丈夫かな?と少し不安になりました。しかし、この実習の持つ意味と可能性について非常に興味を持ちましたので提示させていただきます。

1)一つは、この訪問実習が実は将来医師になるために必要な、医療面接、コミュニケーションスキルのいいトレーニングになること。患者が言うことだけ聞いておればよい、あるいは患者の言うことも耳に入らない医師もおられます。いかにして患者さんから必要な情報を得るかのトレーニングになるように思いました。まだ彼女・彼らはまだ患者さんと接していないようです(5回生になってからベッドサイドのトレーニングが始まるようです)。試行錯誤で、お話を引き出す方法を学び取るにはいい機会かと思います。
 例えば、患者さんの目線より低い位置から話しかけてみる。手を握りながら話しをする。どんなことに困っていらっしゃるのかを聴いてみる。昔はどんな生活をされていたのか聴いてみる(共感する)。その家のトイレやお風呂を見せていただく。

2)また、4回生にとっては患者さんと接する前の段階であること、1回生にとってはまだまだ教養課程で、高校生に1年経験したくらいのもので、医学生といえど他の学部とそんなに学ぶことは違わないように思います。この段階で自分たちがどんな医師像が求められており、そのためにはどんなことをしたらいいのか、意欲を高めるearly exposure(早期体験学習)になっているように思います。

3)大学で実習を行うと、専門医療の世界にどっぷり漬かることになるでしょう。実際に患者さんが住んでいる家に入ってみて初めて見えてくるものがたくさんあると思います。例えば外来で、「この人はどうしてリハビリに意欲的になれないのだろう?」と思って、家を訪問した時、「あらま、バリアがいっぱいあるわ。寝室からトイレやお風呂までは距離があるし、段差がたくさん。ベッド柵は患者さんを拘束してはいないだろうか?」、「あらま、糖尿病がよくならないと思ったら家にはお菓子が一杯置いてあるわ」とか、気づくことが多いと思います。

4)在宅で療養されている患者さん、寝たきりであったり認知症が重度であったりします。「どうして病院に入院しないのだろう?」と思った時、「家の方がよい環境である」ということに気づけるかどうか? 病院のベッドに寝ている患者さんは、どう見ても誰が見ても「患者さん」です。しかし家においては、「おじいちゃん・おばあちゃん」であり「お父さん・お母さん」であり、「夫・妻」という家族の一員です。たとえベッドで寝たきりであっても、その家の大黒柱であるかもしれません。家族の絆を保っている大事な存在であるかもしれません。
お嫁さんが「自宅で義母を看たい」とおっしゃる時、
その患者さんが残してきた歴史的な(人間的な)財産があるからだと思います。義母さんが、お嫁さんを大切にしてこられた、あるいはその家のために一生懸命働いてこられたという歴史は、外から入ってきた医師や看護師には簡単にはわかりません。学生さんには、その歴史をひもとく能力を持っているかもしれません。

5)地域で頑張っている医師や看護師や福祉に携わるスタッフの存在についても考えてもらえる機会かと思います。「地域医療」や「家庭医」の存在について、ちょっと目を向けてみてください。今の学生さんは将来、医師になって病院で研修などを積み、中堅どころになって、開業するかもしれません。開業医になった時の自分の姿と重ね合わせてもらえればとも思います。

6)患者さんやご家族に、病気のことについて語ってもらう物語の医療(NBM, narrative based medicine)というのがあります。証拠のある医療(EBM, evidenced based medicine)と同時に、今注目されている医療の一つです。もしかすると、学生さんが、物語のとびらを開けてくれるかもしれません。(この時は助言者が注意している必要もありますが)

7)4回生は、若くて美しくてエネルギッシュな女性の学生さん3人。1回生はまだ初々しい19〜20歳の男子学生さん3人でした。彼女や彼らなら、素晴らしいドクターになってくれると思います。私達医師・看護師の願いは、「いいお医者さんになってください」ということです。



振り返りシートの回答をもらっています。HPアップについてはこちらの主旨を話し承諾を得ました。
<今後も回答があり次第、アップの予定>

吉4)滋賀医科大学4回生の○○です。

今日はどうもありがとうございました。今日の感想をアンケート形式で送らせていただきます。

経験したこと

今回患者さんのお宅に行き1時間ほどお話をさせて頂きました。在宅医療をしていく上で問題となる褥瘡、体位変換など実際に見せてもらったり、介助をしやすいように枕を使うなどの工夫していることを教えてもらいました。初対面でしたが、とても親切に教えていただきました。病院では見ることが難しい在宅医療の患者さんとご家族の接し方を直に見せてもらうことができました。

印象に残ったこと

介護されているお嫁さんの言葉なのですが、入院、ショートステイはさせず家で介護していきたいということでした。寝たきりになったり、痴呆になった高齢者を病院に入院させそのまま家に戻ってもらうことなくずっと入院させる家族が多いと思っていたので、この言葉は衝撃でした。家族一体となって在宅介護をし、在宅医療が大変だとは感じさせないこの御家族は在宅医療の見本だなと感じました。また、患者さんがすらすら言葉を話されないこともありお嫁さんの方に質問をしていたのですが、お嫁さんが私達がしゃべった事やご自分がが話されたことを繰り返し患者さんに聞こえるように話された姿を見て、ちゃんと患者さんも会話に加わっているんだよということを常に気遣っていらっしゃるんだなと思いました。

戸惑ったこと

初対面の方にどの様なことを質問すればいいかすごく戸惑いました。質問されたことは話しますよとおっしゃって下さったのに言葉が出てこず申し訳なかったです。

今日の気持ち

家族の大切さ、地域医療の重要さ、在宅医療のことを患者さんのお宅に行き学ぶことができました。大学での講義だけではわからない患者さんや看護をする方のお気持ちを直に聞くことができるのはこれから医師になる上でとても重要なことだと思います。

次回の目標

介護者の方だけでなく患者さんとコミュニケーションをとること


樋4)滋賀医科大学4回生の○○です。

前日はお忙しい中実習にご協力いただき、本当にありがとうございました。私たちのためにご尽力いただき、色々とご準備をいただいていましたこと、感激いたしました。

伊吹の町並みはとても落ち着きがあり、大変気に入りました。もっと滋賀県での暮らしのことを、知りたいなと思っています。比良山のほうはよく登山に行くのですが、実はまだ伊吹山には登った事がありません。ぜひ、花の美しい初夏に登ってみたいなと思っています。

この土日に国際保健関係の学会があり、実習の後、金曜の夜はそのまま神戸のほうへ出ており今帰宅しました。本来すぐにお送りするべき御礼と返信が、このように遅くなってしまい申し訳ありませんでした。簡単ですが、今回の感想などを記入したものを、添付いたしますので御査読ください。

経験したこと

脳血管障害による片麻痺の患者さんのご家庭を訪問し、ご本人と看護師さん、および学生2名で1時間程度話をしました。

印象に残ったこと

リハビリを続けている原動力を尋ねた際、「若い頃のように、社会のため、人のために、活動をしたい」「若い頃は青年団で運動をしたり、消防に加わったりしていた」とおっしゃられていました。ご本人が自分の人生の中で最も活き活きしていた時代を語る姿が印象的でした。
 また、ご病気を受け入れてリハビリに取り組んでおられる様子でしたが、実際に半身が動かなくなった時の気持ちを話されるとき、とても悲しそうにされているのが心に残りました。

戸惑ったこと

やはり初対面なので、お互いに緊張していたところがあったと思います。もう少し聞いてみたいような、気になる話題があがっても、深く突っ込んで聞くことを躊躇してしまうことがありました。

疑問に思ったこと

普段はどなたがどのような形で介護に関わっていらっしゃるのか?
地域の人たちとのつながりはないのか?
ご病気と付き合ってこられる中での気持ちの変化はどのようなものだったか?

今日の気持ち

もう5年も滋賀県に住んでいるのに、滋賀県の地域性やその中で生まれ育つ人の価値観、暮しぶりなど、知らないことだらけです。伊吹はのんびりした雰囲気の町で、とても気に入りました。病気のことだけでなく、この街で暮してきたご本人の個人史に興味を持ちました。

次回の目標

次回は少し外を散歩するなどしたいと話しました。もう少しご本人と仲良くなり、若い頃のことや病気と付き合ってきた話などを聞いてみたいです。


森4)四回生の○○です。

印象に残ったこと

 すごく温かいほのぼのとした雰囲気が感じ取れるお家でした。奥さんのおかげで旦那さんもしっかり頑張ろうと思えるのかなと思いました。突然寝たきりになってしまってなかなか自分で動こうとしなかったみたいですがヘルパーさんや先生のお陰で少しでも出来ることは自分でやるようになったと言っておられてやはりそういう所に訪問看護の大切さを実感できました。その他にも、デイケアーに行くことが楽しみだったなど生の感想が聞けてよかったです。

戸惑ったこと

 聞こうと思っていたことはいくつかあったのですが、それが終わってしまうとなかなか何を話していいかわからず、奥さんと看護師さんに助けられることが多々ありました。

疑問に思ったこと

 診療所近くはバスなどはあるけれど、車がないと生活に不便だと思うのですが、車を持っていないお年寄りの方々はどのように診療されたり、その他日常生活を営んでいるのでしょうか。

今日の気持ち

 最近オスキーがあってそのなかで医療面接の試験があったのですが、実際患者さんを目の前にすると練習のようにはうまくいかないと痛感しました。でもこのように私たちのために貴重な時間を割いて下さっている患者さんのことをおもうと、しっかり勉強して自然にいろいろな言葉が出てくるといいなと思いました。

次回の目標

 今回よりも深く病気について話したいです。


森1)滋賀医科大学1年 ○○

経験したこと

 会話

印象に残ったこと

 患者さんが、自分はなんでもないと思うような所で、突然、涙を流したこと
 奥さんが明るく、元気だったこと

戸惑ったこと

 特に聞きたいことがなかったために、どのような話をするか

疑問に思ったこと

 患者さんがどうして急に歩けなくなったのか
 在宅での看取りはどの程度行われているのか

(畑野の補足ですが、この患者さんは脳梗塞の既往があり、数ヶ月前に食事が食べられなくなってしまい体力がガクンと落ちてしまいました。在宅にて点滴を何日か行い回復してきています。今は頑張ってリハビリ中です。
 また、平成9年のデータですが、旧伊吹町の80歳以上の高齢者のうち、4人に3人が自宅でお亡くなりになっています。ちなみに、65歳以上では1/2、全年齢では1/3)。 

今日の気持ち

 今日は、1時間話をするだけだったが、自分から話題を提供することができず、改めて自分にガッカリした。看護師の方や4回生の○○さん、そして何より、奥さんには非常に助けられた。

次回の目標

 今回は状況がわからなかったこともあり、ただ行くだけになってしまったので、次回は頭の中を整理して、実習に望もうと思う。


樋1)滋賀医科大学一回生の○○です。

先生のくださった資料に従って、一回目の訪問実習の振り返りについて報告したいと思います。

経験したこと

普段どういうリハビリをしているのか見せてくれた。主に麻痺のある右半身をゴム
製のトレーニング器機で使っていた。

印象に残ったこと

家の廊下に手すりがあって家族の優しさを感じた。
家族のため、町のため、社会のために社会活動をしたい。そのために元のように動けるようになりたいと言っていたこと。
医師に必要なのは過不足ない程度に気楽に接することだと患者様が言っていたこと。

戸惑ったこと

聞き取りにくいことが何度かあった。
若いころの話や家族の話などどこまで深い話をしていいのかわからなかった。

疑問に思ったこと

患者様が畑野先生は理想的な医者だと言っていたが、普段畑野先生はどのように患者様と接しているのか疑問に思った。

今日の気持ち

何を話すか考えてこなかったのは失敗だった。いかに自分が底の浅い人間か思い知った。

最後になりましたが、先日は親切にしていただきありがとうございました。患者様にも畑野先生にも大変勉強させていただきました。これからもよろしくお願いいたします。


第2回訪問

吉4)滋賀医科大学5回生の○○です。

前日はお忙しい中ケアセンター内を説明して下さったり、外来を見させていただき本当にありがとうございました。すごく広く、照明にも気を配られた設計なのでどの部屋も明るくて過ごしやすいスペースでした。患者さんの気持ちを前向きにさせてくれる場所になるだろうと思いました。本実習とはまた別にお伺いして老人保健施設やショートステイではどのようなことをしているのか勉強させていただきたいです。
 それでは、今回の訪問実習の感想を添付いたします。

経験したこと

今回は介護者の方に、患者さんにベッドに寝てもらったまま足を洗う方法を教えていだたきました。患者さんの容態が前回より悪くなっているということだったので不安だったのですが、起きていて下さったので前回より患者さんと多く接することができました。

印象に残ったこと

患者さんの足を洗う方法が訪問看護でされているやり方ではなく介護者の方がご自分にとっても患者さんにとっても最適な方法を独自に開発されたということに尊敬の念をいだきました。患者さん一人一人違うので教科書通りにいかないというのはよく聞きますが、介護の場合も同じで、それぞれの患者さんに合うやり方を考えていかなくてはいけないということを学びました。
 また、介護者の方が患者さんを常に見られるようにベッドの位置を変えたり部屋の仕切りをなくすなどの工夫をされていたことが印象に残りました。

戸惑ったこと

寝ていらっしゃる時に無理に起こしていいのかというのと、患者さんは足を触られるのが嫌みたいで、足を触った後は声をかけても応対してくださらなくなったので申し訳なかったと思うと同時にどのようにしたら会話を続けられるか考えても言葉がでず戸惑いました。

疑問に思ったこと

患者さんは実際寝ていらっしゃることが多いので診察しに来られている先生方は患者さんの体調などを患者さん本人から聞きだしているのか介護者の方に聞いているのか疑問に思いました。

今日の気持ち

今回は患者さんと少しだけですがお話できて良かったです。介護者の方がいかに負担を減らしながら患者さんにとっても良い介護ができるか日々考えておられ、独自のやり方を編み出しているということ、そのやり方実際見させてもらい一人でもやり方を考えれば介護ができるということがわかりました。しかし、一人でできるとはいえ毎日するのは大変なので、ショートステイや訪問看護を利用することは介護者の負担を少しでも減らしてよりよい介護ができるように支える役割もあるのだと思いました。

次回の目標

今回も会話を続ける難しさを覚えました。全ての患者さんが自分から言いたいことをひっきりなしに話してくださるというわけではないので、自分からもっと話題を触れるように次回は頑張りたいと思います。また、介護者の方は率先して介護をしていらっしゃいますが、同時にストレスも溜まっていらっしゃると思います。介護者の方のフォローもできるように努めたいと思います。

 最後に、今回もお忙しい中先生方にお時間を割いてもらいありがとうございました。次回は勉学は勿論人間的にも成長して伊吹を訪れることができるよう精進します。それでは、次回も宜しくお願いします。


樋4)滋賀医科大学5回生の○○です。

昨日は私たちの訪問にご丁寧に対応していただき、ありがとうございました。振り返りシートを添付いたしますので、ご確認ください。

 新しい包括ケアセンターの規模や美しさは予想以上で、驚きと期待を感じました。研修施設としても位置づけられているとのことで、滋賀県からそうした地域医療の拠点が生まれたことに、感動しています。

 朝日新聞では産科を例に医療施設の「統合」が問題視されているようですが、いぶきのように診療所の「統合」と「機能強化」が組み合わされれば住民にプラスに働くこともあり、一概に診療所の数の問題ではないのだなと思いました。
(小児科・産科についてはまた別の問題があるのでしょうが…)

 次回は7月か8月に訪問させていただきます。至らないところも多いと思いますが、今後ともご指導いただけますと幸いです。


◆経験したこと

2回目、2ヶ月ぶりの患者さん訪問を行いました。Hさんはちょうど『地域包括ケアセンターいぶき』にショートステイされている最中で、居室にて学生2名とHさんの3人で1時間程度話をしたあと、ご本人と一緒に歩きながらセンターの2階を案内していただきました。

◆印象に残ったこと

私たちを見るなり、Hさんは笑顔で「やあ、見違えるようだね」とおっしゃいました。私たちのどこが見違えるようなのかは分からなかったのですが、逆に私たちから見るとHさんは前回よりもずっと元気で、活き活きされていたように思います。
 4月にオープンしたばかりのケアセンターは非常にきれいで、明るく、大規模で驚きました。Hさんはしかし、「立派過ぎてもったいない」「やっぱり家のほうが良い」「何をしたいって分けじゃないけど、家族の顔を見られるのが何より」とおっしゃっていました。家族が一番という言葉がとても印象的でした。

◆戸惑ったこと

 他の利用者さんとは、充分に打ち解けられていない様子でした。Hさんは「重度の人が多いので、会話ができない」と寂しそうにおっしゃっていました。たまたま最後にセンターを案内していただいていた時に昔のお友達の名前を発見し、会いたがっておられたので、会えると良いなと思います。

◆疑問に思ったこと

 「地域包括ケア」の概念に、とても興味を持っています。行政、診療所、医療系スタッフ、住民のそれぞれが、何を目的に、どのようなアクションを起こすのかに興味があります。

◆今日の気持ち

 たまたまですが、有吉佐和子の「恍惚の人」という小説を読み終えたところでした。認知症のお年寄り介護をめぐる家族の葛藤が描かれたこの小説は30年も前の作品ですが、内容はちっとも古びておらず、非常に生々しくリアルでした。アジア諸国の障害者調査などに取り組み、アジア的な介護の理想などを悠長に考察していた私としては、扁平な理想追求では及ばないリアリティーを見せ付けられたようで、ショッキングな作品でした。

 Hさんは認知症ではありませんが、脳梗塞の後遺症で介護が必要です。ショートステイや、訪問診療、デイケアなどを組み合わせて利用しているわけですが、その背景にあるご家族の事情や、ご本人のお気持ちに考えが及ぶと、ますます医療者の役割や行政の取り組み、地域住民が参加したコミュニティー作りなどに関心が沸きました。

 4月より病院実習が始まって、臨床の現場がぐんと近くなりましたが、単に理念や理想を述べるのではなく、謙虚な姿勢で患者さんから学んでいければと思っています。

◆次回の目標

 家に戻られているHさんにお会いするのが楽しみです。もしも天気が良かったら、一緒にお家の周りをお散歩したいと話しました。「家族が一番」とおっしゃっていたHさんが、実際お家でどんな表情をされているのか、今回と比較してみたいと思っています。


樋1)滋賀医大2回生の○○です。

先日はご親切な対応とケアセンターの案内をしていただきありがとうございました。不勉強で至らない点も多かったと思いますが次回もまたよろしくお願いします。

第二回患者様訪問実習 振り返り

@経験したこと

臼井先生と畑野先生に地域包括ケアセンターについてお話を聞かせていただいた。
Hさんにセンターでの生活についてお聞きし、二階を案内していただいた。

A印象に残ったこと

Hさんが初めてお会いしたときより元気に話したり歩いたりしておられた。
Hさんはやはり家のほうが居心地が良いとおっしゃっていた。

B戸惑ったこと

Hさんがまわりには自分より重度の介護を必要とする方が多く、話し相手にならないとおっしゃっていたこと。家の外で生活していると人と話す機会も増えると思っていたがそうでもないようだ。

C今日の気持ち

Hさんがとても元気そうでうれしかった。臼井先生が、私たち学生と話しているときのHさんは表情を見ても元気そうだ、とおっしゃっていた。もしそうなら少しでもHさんに楽しんでいただけたらうれしい。
 また前回課題と感じたプライベートな話も、自分から家族について話してくださったので少し踏み込むことができた。

D次回の目標

今回は天候に恵まれなかったが、次回は外を一緒に散歩してみたい。



第3回訪問

樋4)滋賀医科大学5回生の○○です。

◆経験したこと

3回目の訪問を、包括ケアセンターいぶきの横にあるデイケアセンターにて行いました。広い食堂のようなところで、45分ほどお話をさせていただきました。

◆印象に残ったこと

 ご家族のご病気やご自身の体の衰えなど重なり、最近は気分も落ち込み気味だと伺っていました。実際、始めは言葉も少なく、あまり元気のない印象でした。

 しかし、私が海外旅行のお土産を渡したのをきっかけに、昔の海外旅行の思い出話が堰を切ったように出てきました。Hさんは、中国、韓国、台湾、シンガポール、香港などに、何度もご旅行されたことがあるそうで、その土地の様子や楽しかったことなどを、本当に活き活きとお話してくださいました。砂漠の中に現れる古都、敦煌の美しさなどは、私たちもついつい時間を忘れて引き込まれてしまうほどでした。

◆戸惑ったこと

 今回は、深刻なお家の事情などを伺っていましたので、お会いする前のほうが戸惑いを感じていました。しかし、会って話をしてみるとそんな気持ちは晴れ、やはり会いに来てよかったと思いました。

◆ 疑問に思ったこと

 医学的なことですが、Hさんがお話の途中で「ヒッ」と声を上げて吸気を詰まらせ、5秒ほど動きを止めるというエピソードが2回ほどありました。医学的にどういう状況か分からず、心配になりました。

◆ 今日の気持ち

 今回の訪問は、始めの予想に反してとても楽しいものになりました。今のご家族の状況やリハビリにことを話題にしているうちは、Hさんも浮かない表情でした。しかし、昔の楽しい話題になると、まるで人が変わったかのように良い表情をされ、たくさんのお話を聞かせてくださいました。

 医学の側面のみで接していては、なかなかこういう患者さんの姿を見ることができないように思います。今回3回目ということで、多少は「知った顔の学生」として、心を許してくださる面もあったのかもしれません。今日の経験は、ポリクリなどで患者さんとの人間関係を作る時の参考にしたいと思いました。

 Hさんがデイケアセンターの職員に、私が差し上げたお土産を自慢されたことや、別れ際に「また来いよ!」とおっしゃられたことが、とても嬉しかったです。日程調整など大変ですが、また来たいと思いました。

◆次回の目標

次回も、今回のような楽しい会話ができればと思います。


第4回訪問

吉4)滋賀医大5回生の○○です。(2006年12月)

◆経験したこと

 今回も前回同様,お嫁さん(Mさん)とお話しさせていただきました.Nさんの最近の状態だけでなくMさん自身のことも話してくださり,Nさんだけでなく介護をされている方々のことをもっと知り,介護ストレスについて学んでいかなければいけないと感じました.またNさんのご主人ともお会いできました.

◆印象に残ったこと

 Mさんは介護で疲れを感じていらっしゃるのに,Nさんのご意志を尊重し,ショートステイはこれからも利用しないとおっしゃっていたのが印象に残りました.Nさんは畑野先生や中村先生に話をきいてもらえるだけで気分が晴れるとおっしゃっていました.地域医療に携わる医師の役割について改めて考えさせられました.

◆今日の気持ち

 Nさんは前回の訪問から状態もほとんどお変わりなく,声をかけたら返事してくださりうれしく思いました.NさんがMさんも自分も私が来てくれてうれしいとおっしゃってくださり,私もMさんのストレス解消に少しでもお役に立っていると感じることができうれしく思います.

◆次回の目標

今回同様,楽しくお話させていただきたいと思います.

◆疑問に思ったこと

 これまで、患者さんとご家族の暮らしをみようと訪問をしてきました。この実習の概念が診察、治療に加わるのではなく病院ではみられない患者さんとご家族の関係、背景を学ぶというものだと解釈していたからです。しかし、昨日Nさんが”近所の子が来ているみたいだ”とおっしゃられ、この形で続けていけばいいのか疑問がでてきました。先生のご助言をいただきたいです。

■畑野より(吉4)さんへ疑問点に対する回答

 患者さんやご家族との家族的なおつきあいというのは,すばらしい体験ではないでしょうか.医学生とではなく,近所の娘さんのように接してもらえるようになったことは,今後、医療をする上での大切な経験になると思います.なぜかといえば,大学や大病院では,患者さんを病気を持った患者として扱いますが,地域においては,そうではなく,一人の人間として見ていくことになると思うからです.

 病気は人の生活の中の全部でなく(全部の人もいますが)一部であり,人は家庭や仕事や近所づきあいなどの中で暮らしています.大学にいてはおそらく経験できないことを経験できるのが,このプログラムではないでしょうか.私たちも,その患者さんのことやご家族の背景などをひっくるめて診ておりますし,家族みたいに入っていっています.医療人GPのねらいの部分に入ってこられて,とまどっておられるのは,まさにいい時期に来ておられると思います.もし,不都合なことや嫌なことがあれば,フォローいたしますので,ご連絡ください.

◆(吉4)さんより畑野の回答に対する返事

 アドバイスありがとうございました。確かに、ポリクリでは患者さんと話す内容は病気中心になっており、趣味の話やどのような生活をしているかなかなか話すまでいかない場合が多いです。医療GPは、大学病院では体験できないことを経験するプログラムであり4回訪問させていただいたにもかかわらず、ポリクリで経験していることを中心に考え戸惑いを感じてしまいました。
 今後も戸惑いや疑問を感じることがあるかと思いますが、アドバイスしていただけると嬉しいです。
これからも宜しくお願いします。次回の訪問ですが4月頃になると思います。訪問させていただく時はまた、連絡します。


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