実習の振りかえり(910日〜914日)

静岡○○病院研修医 A.M.

いぶきに来たら、顔出し看板・・・

102歳の爪を切らせていただく
 静岡○○病院から1週間研修に来たA先生は、とても真面目で熱心に取り組んでくれました。「大病院だから地域医療は関係ない」という考えでなく、「地域研修から、どんどんいいところは学んで、病院に帰ってから活かそう」という気持ちが伝わってきて、とても好感が持てました。基本的なコミュニケーションである挨拶も態度もしっかりされていました。

 研修医さんが地域研修を通して学ぶことも多いと思いますが、逆に私たち施設のスタッフが研修医さんを通じて学ぶこともたくさんあることを実感した1週間でした。お疲れ様でした。 (畑野)

  910

午前

午後

 

外来見学

(採血、点滴、腹部エコー、骨密度測定実施)

    

  老健施設見学    

往診

 午前中は外来見学。診療所の外来見学は初めてであったが、専門科毎に分かれている総合病院と異なり、年齢層も疾患もとにかく幅広かった。高血圧・糖尿病・高脂血症等の慢性疾患でフォローアップされている患者さんはもとより、鶏眼、粉瘤、口内炎からの蜂窩織炎、小児の上気道炎、心身症(?)、HCCRFA後、脳梗塞後等々様々な患者さんがいらっしゃった。そういった方々の全てに対し対応して、また腹部エコーから創処置までを行うことが必要とされる診療所の外来は総合病院の外来とは全く違うスキルが必要となることが実感できた。また総合病院から逆紹介のようなかたちで診療所を受診している患者さんも多く、普段は診療所に紹介する側なのでその診療所での様子を窺い知ることができたのはよかった。また特に印象的だったのは肩痛が主訴の患者にビタミン剤の点滴をされた中村先生の「エビデンスはないけれど、医学と医療は違うので患者さんが満足し良くなったと思ってくれるのであれば点滴を行う意義は十分ある。」との言葉であった。医学的に正しいかどうかだけでなく、常に患者さんの思いというものも考えて医療を行う必要があるのだと思った。
 老健施設の見学では、常に在宅の観点から施設で行うべきサービスを考えており、食事も塩分制限など厳密に行うよりも、いずれ家に戻る時のことを考えるとなるべく常食にして家での食事と変わらないようにするほうがよいとのことであった。今までの病院での研修では全く思いもよらなかった考え方であり、この点でも生活全般を視野に入れて医学的なこと以外も考える必要があると思った。
 午後の往診では、家族の支えと往診、訪問看護や訪問リハビリ、デイサービス等の社会資源などの導入によって、今までの僕の考えでは在宅で過すのは難しいだろうと思える患者さんが多く家にいらっしゃることに驚かされた。畑野先生は「町全体が1つの病院であり、家が病室で電話がナースコールであり、往診が回診なんだ」と言われたが、患者さんをなるべく家で支えていこうという御家族が、ある意味看護師であり、栄養士であり、PTOTの役割も果しているのだと思った。もちろん楽なことではないと思うが、何かあったらすぐに往診に来てもらえるとの安心感があるからこそ在宅介護を頑張れるのかなと思った。また「往診で大事なことは患者さん本人を診ることもそうだが、介護している家族の頑張りをほめてあげることだ。」「家を見ることで病院の外来だけでは決してわからない色々なことが見えてくる。(家の造りによって必要な介護サービスが異なってくる。家族の中で患者さんがどういう立場、扱いかがよくわかる等)」「(口唇ジスキネジア、心雑音のある患者さんで)その人の生活次第で必ずしも全ての医学的問題に検査や治療が必要なわけではない」など、畑野先生のお話には地域医療の現場で本当に大切なことを学ばせて頂いたように思う。

@今日できたこと、うまくいったこと

A今日うまくいかなかったこと、失敗したこと

 

  往診先であいさつ、自己紹介を行えた。

  腹部エコー

  初めての骨密度測定

 

  点滴を2回刺してしまった

・往診先でもっとご家族のお話を積極的に聞けばよかった

 

 

 

B今の気持ち、感情、気づき

C今後学びたい内容・課題

 

  医学と医療は異なり、今まで自分が正しいと思っていたことが状況が変われば必ずしも正しいわけではないのだということ

 

  迷っている自分の将来を考えるヒントがあった

 

包括ケアのうちの医師以外が行う部分

(看護やリハビリなど)

 


往診にて褥瘡処置

褥瘡の計測

911

午前

午後

 

訪問看護(2件)

    

調剤(見学&実習)

栄養(含嚥下機能評価)

 午前中は訪問看護2件。1件目は多発脳梗塞後で左半身麻痺のある方で、バイタル測定、聴診、介護者である御家族とのお話の後、主に左半身の拘縮予防と右半身の筋力維持、嚥下訓練のためのリハビリを行った。2件目は寝たきりの方の両下腿の皮膚びらんの処置を行った。今回はリハビリ、創処置が主であったが、その他にもカテーテルの管理や在宅酸素の管理など、ヘルパーがやれること以外の全てを何でも訪問看護では行っているとのことであった。自分のいる病院にも訪問看護ステーションはあるが、今まではその業務内容をよくわかっていなかったので利用することがあまりなかったが、今回その実態の一端に触れることができたので今後もっと積極的に活用していこうと思った。
 また昨日の往診時に畑野先生も仰っていたことだが、訪問看護でも大事なのは介護者である御家族の心身のケアであるとのことであった。在宅介護の主な担い手は家族であり、訪問看護やヘルパーだけでは在宅で生活することは不可能であるから、御家族が困らないように支えていくことが在宅診療を成功させるコツなのだと思った。またそれが長年に渡って実践されているから伊吹地区は在宅で診ていこうとする風土があるのだと思った。
 午後の最初は調剤。それほど広くない薬品庫に約600種類もの薬剤があり、1人の薬剤師さんで外来・老健をカバーして、てきぱきと調剤をこなしているのが印象的であった。またよく処方されて一包化にされやすい薬剤をあらかじめ分けておいたり、似た包装で取り違えやすい薬剤同士は近くに置かない等様々な工夫がされていた。調剤にいた一時間ほどの間で、ほとんどの患者さんに消炎鎮痛剤の貼り薬も処方されており、外来の患者はやはり高齢者が多いのだとあらためて実感できた。
 次に栄養。管理栄養士の方が老健に入所中の方々の栄養ケアプランを立てている中で、個別の入所者毎に同じきざみ食でも食材によってきざみ方を変えている点等、かなり細かいところまで把握して対応されているのがすごいと思った。また脳血管障害後の方など誤嚥のリスクもあり、病院だったら経口摂取を行うことに躊躇する場合もあるが、いぶきでは嚥下機能評価を行ってリスクを判断した上でできるだけ経口摂取を維持しようとしている点も、老健施設が在宅への橋渡しであるというケアセンターいぶきの理念を体現していると思った。

@今日できたこと、うまくいったこと

A今日うまくいかなかったこと、失敗したこと

 

  初めての嚥下機能評価

 

 

訪問看護の際もっと積極的に手を出して参加すればよかった

B今の気持ち、感情、気づき

C今後学びたい内容・課題

 

  患者の生活背景を常に考慮して医療は行われる必要がある。目標をきちんと設定して、その時点で何が相手にとって必要なことかをかんがえなければならない。

 

診療所と総合病院の連携(診療所からのアプローチ)


  912

午前

午後

 

在宅支援(事業所訪問)

    

出張診療所(板並・大久保)

 午前中は在宅支援。まずケアマネージャーの西村さんより介護保険の概要を説明して頂く。ケアマネージャーさんが病院の医師に求める事などの話しの中で耳の痛い話しもあり、反省すべき点があると思った。またケアマネージャーは介護保険のコーディネ―トのみならず、経済面も含め生活全般の把握が必要であり、被介護者と医療機関、事業所等との窓口となっていることを知り、医療従事者側としてはもっとケアマネージャーと連携し介護資源を活用していくことが必要だと思った。デイケアは民家を改装した小規模の施設から利用者が30人近い大規模な施設まで見学させて頂いたが、特に小規模の地域に密着した施設で、利用者の皆さんが元気で表情が明るい点が印象的だった。また初めて行ったどの施設でも初対面の人に「畑野先生と中村先生のところに研修させてもらいに来てます。」とあいさつすると皆さん好意的に受け入れてくださり、先生方の地域における信頼の高さが実感できた。デイケアを利用している方は一見元気そうでも認知症の方が多く、早期発見のため定期的に長谷川式などでスクリーニングを行う事が必要だと思うということを西村さんから伺い、今後機会があれば早期に認知症の方をリハビリにつなげていければと思った。
 午後は中村先生に同行して板並と大久保の出張診療所。板並診療所はプレハブで血圧計ぐらいしかなく、大雪や倒木に今まで耐えられたのが不思議なことでかなりインパクトがあった。そのような診療所でも、患者さんは移動手段が専ら徒歩であるため他の医療機関への代替はできず週1回でも存続していることが非常に助かるとのことであった。両診療所とも患者さんは定期的に受診している方ばかりで、特に変わったところがなくても診療所に来て中村先生に会って話をすることが患者さんにとって楽しみとなっている様子であった。また患者さん同士が顔なじみで出張所の待合室で話している様子を拝見し、診療所が地域の中の社交場になっている面もあるのだなと思った。大久保診療所では何人か患者さんを診察させて頂いたが、血圧を測定する際にもただ数値を患者さんに伝えるだけでなく「これぐらいなら少し高いけど大丈夫」等と必ず一言付け加え、患者さんを安心させてあげる事が必要で、これは血液検査など他の検査結果を話す時にも通じるとのフィードバックを中村先生から受けたので、今後外来診察を行う際に活かしていきたい。

@今日できたこと、うまくいったこと

A今日うまくいかなかったこと、失敗したこと

 

  血圧測定含め基本的な身体診察

  心臓弁膜疾患の典型的な心雑音を聞くことができた。

 

診療所での患者さんへの説明の仕方

B今の気持ち、感情、気づき

C今後学びたい内容・課題

患者さんから会うのが楽しみに思われ、信頼される医師になりたい。

外来での患者さんとの接し方


913

午前

午後

 

老健(食事介助、排泄介助、整容)

    

老健(着替え、入浴介助、レクリエーション)

 今日は老健施設で各種介助を経験した。施設の基本的な方針は在宅に戻るための橋渡しということであり、そのため各入所者のADLをそれぞれ把握し、どこまでは任せることができてどこからは最低限介助するべきかを個別に判断して対応しているとのことであった。今日接したのは主に認知症のある方々であったが、病院でならばなるべく事故が起こらないようにと動かさないようにし、場合によっては抑制されているような人たちが、職員に見守られつつ1人でトイレに行ったり、車椅子で移動していたりした。またできる範囲内で着替え、排泄などを最大限自分で行うようにし、できるだけ介助を少なくしようとしていたのが、ADLの回復と家へ帰ることを見据えた老健施設と、病気の治療が一番の目的である病院との大きな違いであると思った。またその為の自立を手伝うために風呂場の手すりに滑り止めが付いていたりと、細かい工夫が随所でされていたのが印象的だった。食事もなかにはきざみ食などの人もいるが、かなりの人がお粥や減塩食などではなく普通の食事を食べていて、細かい食事制限よりもおいしいと思える物を出してしっかりと食べてもらえる方が高齢者のQOLの向上にはよいと思うとの考えも老健施設ならではなのだろうと思った。リハビリの成果もありかなりの部分まで自分でされる方もいたが、それでも各種介助(特に入浴介助)は肉体労働であり、在宅に戻った場合やはり御家族の負担は大きいだろうと思った。だからこそデイケアやショートステイ、往診、訪問看護、ヘルパーサービスなどの福祉資源を導入してできるだけ介助者の負担を軽減する必要があると思った。
 

@今日できたこと、うまくいったこと

A今日うまくいかなかったこと、失敗したこと

 

  入浴介助、爪切り、排泄介助、食事介助、移動介助

 

 

麻痺がある方の食事介助中に少し目を離した隙にお椀をひっくりかえされてしまった。皮膚の弱い患者さんの入浴介助で強くこすりすぎることがあった。

B今の気持ち、感情、気づき

C今後学びたい内容・課題

 

  初日から診療所外来、往診、訪問看護、老健施設などで実習させて頂いて、医療の現場ではそのどれか1つだけでは成り立たず全てが連携しているということ。小規模の地域医療だからその連携がわかりやすかったが、病院においてもその視点を忘れずに医療を提供する必要があると思った。

 

医療だけでなく福祉・介護含めサービスを提供していくことで患者さんの生活全般をサポートしていく。そのために今回の研修で他業種の実際を学んだので今後の連携に活かしていく。



■9月14日

地域研修・・・自分の車で地域を探索

地域研修レポート集

音楽の借り先→http://www.tam-music.com/index.html 『引っ越ししてから・・・』

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