研修医地域研修

2007.10.9〜19

(往診先にて。写真掲載は患者さんの了解を得ています)

 T先生、お疲れ様でした。7月に大津で、私が滋賀県内の研修医さん70名を相手に講演をさせていただきました。興味を持ったT先生が、うちの研修を2週間志願してくれたようです。
 いつもの研修よりも「医療をやらない」プログラムでした(^^;)。小規模多機能デイサービスであったり、社協のデイサービスであったり、ホームヘルプサービスであったり、初めてのことばかりでかなり苦労されたのではないかと思います。でも、地域住民の視点から、医療はどのように映るか、病院はどのように映るか、医師に対してどのようなことを期待しているのか感じ取ってもらえたのではないでしょうか?
 今後の病院での仕事で、患者さんが地域に帰ってもどのような医療・福祉サービスを利用することができるのか理解していただけたことと思います。 T先生が、とてもよい医師になれること保証します。そして、ますますのご活躍をお祈りします。(畑野)

スケジュール

10/910/12

8:15

朝ミーティング

午前 8:30

祝日

デイサーケ

担当:箕浦

ほほえみ

担当:中村

訪問入浴

担当:中村

愛らんどディ

担当:中村

12:30

昼食、休憩

午後 14:00

祝日

デイサーケア

担当:箕浦

ほほえみ

担当:中村

訪問介護

担当:中村

愛らんどディ

担当:中村

夕方 18:00

10/1510/19

8:15

朝ミーティング

午前 8:30

調剤・栄養

担当:久保・丸本

老健介護

担当:阪東

在宅支援

担当:西村

外来実習

担当:中村

外来実践

担当:畑野

12:30

昼食、休憩

午後 14:00

在宅看護

担当:北川

老健介護

担当:阪東

出張診療所

担当:中村

訪問診療

担当:中村

研修まとめ

担当:畑野

夕方 18:00

(プログラム作成は中村先生)


実習の振りかえり(109日〜1019日)

市立長浜病院研修医 T.K.

109()

午前 デイケア(リハビリ見学)
午後 デイケア

@    内容

デイケアにて送迎、リハビリ見学、体操・レクレーションへの参加

A    感想

まず、朝迎えに行くところから始まり、利用者さんがどういった家、環境で生活されているのかを実際に見ることで、感じることができました。その後バイタルサインのチェックの後、リハビリを見学しました。長浜病院でも実際にリハビリを見学する機会はありませんでしたので、脳梗塞後の患者さんや関節拘縮の予防にどうのようなリハビリをされているのかを見ることができ大変有意義でした。その後患者さんと話す機会があり、今までリハビリを続けて、徐々に麻痺が改善し、歩くことができるようになったといったエピソード聞くことができました。またレクレーションにも参加することで暮らしている日々の生活を少しだけ感じることができました。なかなかイメージしにくい高齢者の日々の生活に触れることで、日々の生活の大変さやリハビリの苦労、レクレーションのときの楽しそうな表情を感じたり見たりでき、今後の診療にも感情移入できるという点で役立つであろうと思いました。

B上手くできたこと、できなかったこと

はじめ、利用者さんに話を聞いたり、話の輪に入ったりするのが、なかなかできませんでした。やはり、職員さんはその点慣れており、まねしながら少しづつ話ができました。もう少し積極性が必要であったかなと感じました。

C今後の課題

やはり、話を聞くだけでなく、実際に見たり、共に過ごしたりすることで、学ぶことは多いと感じました。そのような機会があれば何事も積極的に参加したいと思います。また診療する上でコミュニケーションの能力は必須だと思います。もう少し積極的に話しかけることや相手の話を引き出すような話術が見につけばいいと思いました。


1010()

午前 デイケアほほえみ
午後 デイケアほほえみ

@内容

デイケアにて体操・レクレーションへの参加、食事を共にし、談笑

A感想

今日は初めから、自己紹介をし、血圧を測りながら体調のことなどを聞いて回りうまく話に入ることができました。午前中は体操にトランプ、しりとりなどを行い、すぐに利用者さんと会話もはずむようになりました。昼食は手作りで家庭的で、久しぶりに懐かしい味を楽しむことができ大満足でした。もっと食べたいくらいでした。午後からも歌を歌ったり、ボーリングなどのレクレーションをしたりと楽しみました。普段しないようなことばかりでとまどいもありましたが、いつの間にか自分も歌を歌って、一緒に楽しんでいました。また自己紹介をクイズ形式で(例えば年齢や出身地を、ヒントを出しながら当ててもらう)したら、思いのほか盛り上がり、皆表情がよく楽しそうでした。利用者さんはみな高齢ですが、生活はほぼ自立していて、対話もでき認知症は軽いと思ったのですが、後から畑野先生に聞いた話では重い認知症の方もおられるとのことで、環境やあるいは細かなことで症状もかわるのかなと思いました。認知症の認識が少し変わりました。ほほえみは家の中に居るような環境で、日常生活を行う高齢者と同じ時間を過ごすことができ勉強になりました。

B上手くできたこと、できなかったこと

今日は昨日よりもうまくすんなりと話に入ることができ、うまくコミュニケーションがとれました。

C今後の課題

認知症の診断、あるいはその重症度を判断する上で、病院で本人と話をするだけでは判断をあやまる可能性があると感じました。介護保険において、医師の意見書を書く機会がこれからあると思いますが、その際には、家族ともよく話をするなど日常生活を詳しく知る必要があると思いました。


1011()

午前 訪問入浴、訪問介護(買い物、昼食準備)
午後 訪問介護(全身清拭、排泄処理、生活服薬管理など)

@    内容

訪問入浴見学、訪問介護に同行し体験

A    感想

訪問入浴に同行して、一番感じたことは手際の良さでした。寝たきりの利用者をお風呂に入れるのはさぞかし大変なのだろうと漠然と想像していましたが、お宅に着くなり、すぐさま浴槽を組み立て、お湯をはり、利用者のバイタルサインなどをチェックしながらテキパキと準備を進めていき、入浴も手際よく済ませていったことに正直驚きました。その中で丁寧に体を洗い、着替えも済ませ、利用者さんも満足そうでした。しかしながら雨の日は大変とのことで、これからの季節雪でも降ろうものならさぞ大変だろうと思いました。

午前の途中からは訪問介護に同行し、買い物、料理、清拭などを体験しました。ヘルパーさんはすっかり顔なじみのようで、信頼関係が感じられたのが印象的でした。ここでも決められた時間の中で、決まれたことを背ませていく手際の良さが感じられました。

B    上手くできたこと、できなかったこと

実際に介護を受けておられる方と会話し、直接利用者さんの声を聞くことができ、生活の中で訪問介護を受けて助かっているという感想を聞くことができました。また体の悩みなどの相談にのって、話を聞いてあげられたのがよかったです。

C今後の課題

短い時間の中での体験でしたが、介護を必要としている高齢者がどのような介護が必要であるのかを学びました。今後に役立てられればと思います。


1012()

午前 デイサービス愛ランド

午後 デイサービス愛ランド

@    内容

一日愛ランドにて送迎、レクレーションなどを体験

A    感想

まず、利用者の送迎に同行し、愛ランドに戻ってきてからは、自己紹介から始め、皆の質問に答えました。ここでもできるだけ利用者さんとの対話ができればと思っていましたので、まずきっかけができてよかったです。質問はやはり体の悩みが多かったです。皆すでに医療機関にかかってはいても、あまり話をする時間がないのか、悩みや不安をかかえているようでした。一つ一つ、自分なりに考えて質問に答え、あまりきちんと答えられないこともありましたが、喜んでもらいよかったです。きっと普段から話をしたいことを抱えているのだろうと感じました。デイケアと同様に体操やレクレーションに参加し、皆と同じ時間を過ごすことができいい経験ができました。

B    上手くできたこと、できなかったこと

話をするきっかけを作っていただいたので、皆と上手く話をすることができました。

C今後の課題

みな医師ともっと話したいけれども、外来では時間がなく不安が十分に解消されていないようでした。確かに限られた時間の中で話をするのは難しいかもしれませんが、信頼関係を築くには、時間をかけて話をするのが大切であると感じました。


1015()

午前 調剤、栄養
午後 在宅看護

@    内容

調剤の見学、栄養管理の仕事を見学、在宅看護の仕事に参加

A    感想

調剤を含め、薬剤師さんの仕事を見学するのは初めてでした。この施設では薬剤師は一人だけとのことで、仕事をテキパキとこなしているのが印象的でした。棚には薬剤が整然と並んでおり、しかしながら、似た名前の薬剤を間違えないように配列するなどの工夫もされていました。やはり薬剤においては間違いが許されないので、そのあたりは一番気を使っているようで、確認はしっかりしていました。

栄養士さんも同じく一人だけで、事務的な仕事も多く忙しそうでした。その中で2Fの老健介護の栄養管理のチェックや実際の食事を観察するなど、様々見学しました。

在宅看護では、一人の利用者さんを実際に訪問し、バイタルサインのチェック、清拭、体調の管理などの仕事を手伝いました。この利用者さんは、尿道バルーンが入っており、ヘルパーさんでは手に負えない部分があるとの事で、看護師の仕事を見ることができました。また、看護師さんから介護の様々な苦労話を聞くことができ勉強になりました。

B    上手くできたこと、できなかったこと

看護師さんと様々話すことができ、苦労を知ることができました。

C    今後の課題

今後は病気を治療する上で、特に高齢者では、退院後の介護まで意識した治療方針を考えなければいけないと感じました。患者さんやその家族さんが何を求めているのか、意識する必要があると感じました。

調剤では今まであまり見る機会のなかった薬を実際に見ることができ、薬の色や大きさや剤形がよくわかったので、今後の役に立つと思いました。


1016()

午前 老健介護
午後 老健介護

@    内容

排泄介助、レクレーション、体操、食事介助、入浴介助など)

A    感想

一番印象に残ったのは、入浴です。すべて初めてのことで、思いのほか足腰の負担がかかり、要領も分からず、教えてもらいながら、ベッドへの移乗を行い、体を洗い、服を着せるまでを、30分以上かかりながら、何とかこなしました。シャワーなど顔やら耳やらにかけてしまい大分迷惑をかけてしまいました。しかしながら、麻痺があり車椅子の利用者さんをお風呂に入れるのが、いかに大変かが良く分かりました。介護にも、服を着せるにしても麻痺側から袖を通すなど様々決められた方法があり勉強になりました。

B    上手くできたこと、できなかったこと

食事介助はこぼしたりすることもなく比較的うまくできましたが、入浴は体力的にもきつく、また方法も理解しておらず、迷惑をかけてしまいました。

C    今後の課題

普段は看護師さんに任せてしまい、経験してこなかったことを体験することができました。うまくできなくても、どのような仕事をしているのかを理解していくのは大切であると感じました。


1017()

午前 在宅支援
午後 出張診療所

@    内容

ケアマネさんに同行、介護認定聞き取り調査、出張診療所の体験

A    感想

介護保険において中心的役割を果たすケアマネさんに介護保険のしくみについて話を伺い、そして実際にどのように介護申請から認定、ケアプランの作成までの流れについて説明を受け、実際に聞き取り調査(実際にはその前の段階とのこと)に同行し、介護保険が身近に感じるくらいよく理解できました。しかしながら、聞き取り調査では、その方の生活背景などかなり踏み込んだところまで質問しなければならず、初めての訪問ですべて聞くのは難しいとのことでした。繰り返し訪問し、信頼関係ができて初めて様々なことまで質問し生活背景を理解した上で、その人にあったケアプランを作成するとのことでした。

出張診療所実習は楽しみにしていた実習のひとつでした。患者さんにとって一番身近な存在である診療所の医師がどのような病気を見ていて、どのように対処しているのか興味がありました。待合室で患者さんと話をしましたが、持っている疾患は様々で多岐にわたっており、特に整形外科的な腰痛や膝関節症が多いという印象持ちました。やはり内科だけでなく整形外科や眼科、皮膚科など様々に対処できなければならないとわかりました。そしてなにより、医師が患者さんにとって身近で信頼関係が形成されているのを感じました。

B    上手くできたこと、できなかったこと

介護保険の仕組みについてよく理解することができました。出張診療所では患者さんが気軽に話をしてくださり、病気のこと、出張診療所があることでいかに助かっているかなど様々話を聞くことができました。

C    今後の課題

介護保険について理解を深めたことで、今後患者さんの退院後の介護について、在宅を希望されている場合に利用できるサービスの種類など、簡単な提案や助言をできればと思いました。

出張診療所実習では医師と地域の人たちとの信頼関係に触れることができ、今後患者さんとうまく信頼関係を築く上で参考にできればいいと思いました。


1018()

午前 外来実習
午後 往診

@    内容

外来にて採血、点滴、胃カメラや大腸カメラの見学、往診に同行し診察を実践

A    感想

久々に採血や点滴の挿入をしました。問題なくできましたが、はじめは少し緊張しました。また、外来は人数も多く、その合間に胃カメラやエコーの検査が入り医師があちこち動きながらと忙しそうでした。そのなかで、できる検査はすべてやるというのは、確かに大変ですが、患者さんにとってはありがたいものですし、医師にとってもモチベーションを保つ上でやりがいのあるものだと思いました。大腸カメラまでしていたのは驚きで、病院でしている外来の検査はすべてしているのではないかと思いました。また、カメラやエコーは良いものが入っていて、「診療所は診断するのが大切だから設備も良いものを使ったほうがいい」という言葉はその通りだなと思いました。

往診は、米原市の広範囲にわたって移動しました。患者さんにとってはとてもありがたいことだと思います。皆顔なじみの方ばかりのようで、ここでも信頼関係を垣間見ることができました。

B    上手くできたこと、できなかったこと

点滴の挿入に一度失敗してしまいましたが、その他は大方うまくできました。往診では、初対面の方と話すのも慣れてきたのを実感しました。

C    今後の課題

往診は診療所まで来られない患者さんにとっては大変ありがたいものだと思います。今後もこの経験を覚えておいて、また往診する機会があればと思います。


1019()

午前 外来実習
午後 往診、実習のまとめ

@内容

外来にて胃カメラ、エコーの見学、実践、スパイロやDEXAの体験、往診に同行

A感想

エコーを実際にさせてもらいました。救急の現場で胆石などを見るためにすることはありますが、スクリーニングをすることはあまりないので、いい経験になりました。患者さんの中村先生と顔見知りで快く承諾していただき、診療所が地域に根付いているのを感じました。またスパイロなど、指示は出すものの実際には見たこともない検査があり、ここで経験できよかったです。医師看護師共に研修医を快く受け入れてくださり、本当にありがたかったです。往診では昨日訪れた家を訪問し、昨日とは違った患者さんの表情を見ることができました。やはり患者さんも病院にいる姿がすべてではありません。むしろ家にいる姿のほうが本来の姿であり、往診でしか分からないこともあるかもしれないと感じました。

B上手くできたこと、できなかったこと

エコーを患者さんと話しながら、自然にできました。また往診するときなど、人の家を訪れるときは、当たり前ですがきちんと挨拶をし、慣れた中にも礼儀を忘れないようにしたいと思います。

C今後の課題

普段からいつも同じ方と一緒に仕事をしていると感謝することを忘れてしまいがちですが、看護師さんたちに感謝しながら、他の医療スタッフといい関係で仕事できればいいと感じました。


まとめ

デイケア、デイサービスで高齢の利用者さんとより近い距離で接し、レクレーション、食事介助、入浴介助など、今まで経験したことのないことを多く経験し、大変勉強になりました。この経験が明日すぐ役に立つことはないにしても、介護や福祉サービスにいろいろなものがあり、実際にどのように利用されているか見てきた今では必ずいずれ役に立つものと思います。

 様々な場所で利用者さんやヘルパーさん、看護師さんと実際に話をすることができ、率直な意見感想を聞くことができたのは大きかったと思います。一番印象に残ったのは、「その人その人がどこでどのような最期を過ごすのがいいか考えて欲しい」という看護師さんの言葉でした。今まで何人も病院で亡くなる方を見てきましたが、その人が本当にそれを望んでいたのか、またそうすべきであったかは分かりません。もちろん病院で最期を過ごすのが仕方なかった、あるいはそれを望んでいた方もいらっしゃると思いますが、僕自身が考えているようにやはりできるだけ最期は自宅で過ごしたいものだと思います。それが、家族に介護等負担がかかり迷惑がかかる、あるいは様々な生活面での不安もあり諦めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。様々な介護看護のサービスを見てきた今、少しでも希望がかなうよう「こんなサービスもありますよ」と助言することができると思います。地域の人たちやその人たちに一番近い医療福祉関係者と過ごすことができ、多くのことを学んだと思います。初めて経験することは大変ではありますが、達成感や満足感を得ることのできるいいことだと思います。

実習の内容やプランについてですが、大方満足しています。はじめは診療所の先生がどのような病気を診ているのか、どのような検査をし、診断して、どのような薬を使っているのかに興味がありました。しかしながら実習していくうちにむしろじっくりと話をして、信頼関係を築くほうが地域医療で大切なのかなと感じ、結果としてそれができたので満足しています。しかし、採血したり、点滴を作って自分で針を刺したり、あるいは薬を調合したり、レントゲンを撮ったりなど、普段病院ではできない医療スタッフの研修がもう少しあってもいいかなとは思いました。

 もう一つは、自分もそうですが、医師になっても初めはなかなか人と話すのが苦手でうまくコミュニケーションがとれないことがあります。人と話すことで学ぶことはとても多く、いろいろな情報を得ることができます。僕自身もはじめは面食らってしまい、話をするきっかけがなくぎこちなくなってしまいました。積極性が足りなかったと反省するところも多いのですが、特に医師になって間もない研修医が来たときには、まず話をしやすい患者さんや利用者さんを紹介していただいて自己紹介するきっかけを作っていただくなど、話を始めるきっかけを作っていただければ幸いです。ほとんどの場合、スタッフが親切に「長浜病院から来られたお医者さんですよ」と紹介していただいたので容易に話に入ることができました。ケアセンターのスタッフの雰囲気がよく親切でとても実習しやすかったです。

最後になりましたが、畑野先生、中村先生をはじめ面倒を見ていただいたすべてのスタッフに感謝しています。本当にありがとうございました。