日本プライマリケア学会 第21回近畿地方会

2007年11月25日  奈良県新公会堂

シンポジウム「在宅医療と地域連携」


 4月に山田先生より「シンポジストを引き受けてくれないか」と言われ、夏に一度、シンポジストで打ち合わせのミーティングを行い、メイリングリストを立ち上げ、トラフィックよろしく?、本日発表する機会をいただくことができました。
 このような機会をいただいた日本プライマリケア学会近畿地方会会長 北岡先生(奈良県医師会長)、司会をいただいた堀江医院院長 堀江先生、市立奈良病院副管理者 武田先生、コメンテーターの副会長 木戸先生、メインシンポジストの地域医療研究所所長 山田先生、同席したシンポジスト 淀川キリスト教病院 訪問看護ステーション所長 高沢先生、森田内科循環器科クリニック院長 森田先生には、厚く御礼申し上げます。

「今なぜ在宅医療なのか」 私の考える在宅医療―家庭医と在宅医療―   山田先生
「在宅における訪問看護の実際」   高沢先生
「農村における在宅医療と地域連携―地域包括ケアの実践―」   畑野
「診療所開業医の視点からみた在宅医療と地域連携の現状と問題点」   森田先生


 私は、今実践していることをそのまま伝えさせていただきました。理論ではなく現場で普通に行っていることが、実は大事なことなのだということを、今回のシンポジウムで改めて実感できました。
 シンポジウムの後は、日本医学会会長の高久先生の特別講演がありました。私ども地域医療振興協会のボスでもありますし、自治医大の学長でもある高久先生は、とてもお忙しいようで、午前東京で会議をしてから奈良にお見えになったようです。とても勇気づけられました。

とてもよい天気で奈良公園も賑わい・・・シカ君に会う

車で行きましたが、とても渋滞していました

会場となった新公会堂から東大寺の方向

メイン会場は能楽堂でありました・・・珍しい

シンポジウム司会の先生方

山田先生による基調講演

いい感じに見えるんですねぇ

同級生の藤原先生が撮ってくれてました。感謝

ステージから見る客席(そういえば正面奥で藤原先生がカメラを構えておられる)

発表される高沢先生

シンポジウムの後は特別講演の高久先生

特別講演は上記のタイトルでした

医師不足と女医さんの問題など・・・

シンポジウム「在宅医療と地域連携」
講演「農村における在宅医療と地域連携――地域包括ケアの実践――」 要旨
講師 畑野秀樹
 米原市旧伊吹町は,岐阜県と接する人口6000人の農山村である。平成5年から国保診療所で働いてきた経験から、地域包括ケアシステムを実践する施設として平成18年に『地域包括ケアセンターいぶき』を立ち上げることができた。
 地域医療とは何か。
@その地域を愛し誇りを持つこと。
A医療者のための医療ではなく住民に喜ばれ評価される医療であること。
B行政と仲よくすること。
C地域包括医療を展開すること。
D医療を通して地域社会(まちづくり)貢献すること。
このことを基本理念として取り組んできた。
 実際には、地域で長年診てきた高齢者が肺炎などで入院して、病院への訪問時、あまり幸せそうな表情ではない。なぜなら、自宅では大切な家族の一員で、自分の生活リズムで暮らしていたはずが、病院では患者として見られ、画一的な生活リズムに合わされてしまうからである。
 住民が本当に望んでいることは何だろうか。急性期が終われば、できるだけ早期に住み慣れた家に帰って家族とともに自分のリズムで生活したいのではないだろうか。できるだけその希望を叶えることが地域の医師の役割ではないだろうか。
 現在2名の医師で7080名の在宅医療を行っている。在宅医療は一人ではできないので、仲間を増やすことが必要となる。看護師が訪問看護に行くようにし、保健師と地域ぐるみの情報交換や民生委員との協力を図る。社会福祉協議会との連携を行い、デイサービスやホームヘルプとの情報を共有する。行政を仲間に入れて、おむつの助成など在宅支援を支える体制づくりをしてもらう。
 また病院との連携が必要である。後方病院の存在がないと、患者も家族も診療所の医師も、不安と疲労で続けられなくなる。急変時は病院の開放型システムを使う方法、またターミナル患者の病診連携カードを使う方法(家に帰ってもカードを提示すれば無条件で入院できる)、病院の病診連携室とのパイプを太くしておくことも大切である。
 在宅でどこまで医療を行うかは、ご本人やご家族の希望を尊重しながら、ある程度診療所医師がリーダーシップをとる必要がある。中心静脈栄養、胃瘻、人工呼吸器、褥創、ターミナルケアなど、病院との連携を取りながら、窓口を広く受け入れる。患者宅には医師の携帯電話番号を知らせることで家族はいつでもつながっている安心感から、逆に夜間の電話は少なくなる。
 30年後、60年後に、なおも家族の絆を大切にし、思いやりを持てる地域づくりをしていくためにも、在宅医療は今後益々大切になってくると考えられる。