地域包括ケアセンターいぶき
平成20年を迎えるに当たって

2008.1.1
センター長 畑野秀樹


おばあちゃん、チュウ〜

@命をつなぐ

 旧伊吹町だけでなく、米原市全域に訪問診療、訪問看護をしています。訪問診療は、70件〜80件。訪問看護は30件あまり。この地域の住民が、この地域に住んでいて良かったと思ってもらえるように、精一杯の力を振り絞って地域包括ケアを展開したいと思います。
 この写真は、つい数日前に、往診した家の様子です。95才の女性は寝たきりで、うまく食べることができず、何度も誤嚥性肺炎を繰り返しておられました。ご家族は、なんとか元気になって欲しいと、私たちのアドバイスとは逆に「胃瘻をしてください」との結論を出されました。

 病院に入院して、胃瘻を作ってもらい、今は家で過ごされています。訪問診療と、訪問看護と、訪問マッサージと、デイサービスを利用しておられます。また、時々ショートステイを使って、家族の休息を図っておられます。

 4人のひ孫さんがいるのですが、おばあちゃんのベッドの周りに集まり、「おばあちゃん、だいじょーぶぅ?」と言って、ベッドのスプリングでぴょんぴょん跳ねていました。体を動かすこともなく、ただされるがままにじっとしているおばあちゃん。「おばあちゃん、チュウー」と言って双子ちゃんが、キスしている姿は、これが家族の原点だと思いました。

 私たちの仕事は、命を次の世代につなぐこと。病・老・死があるからこそ、「生」が輝くことを、若い世代に伝えていくことだと思っています。

姉川ダムに来たドー!

A息を吹き返す=いぶき

 老健部門は、在宅支援とリハビリに特化した施設です。4つのユニットに分けて、各ユニットが性格を分け、お互いに刺激しあい、共に成長していこうとしています。写真は、姉川ダムを訪れた「ささゆり・しもつけ」ユニットの皆さん。ささしもユニットの平成20年度の目標は、

今年もさまざまな人との関わりを大切にし、”やればできる 何とかなるさ”の精神で、いろいろなことに取り組んでいきたいと思います。

 とのことでした。病院とは全く違う施設になっていますし、特別養護老人ホームとも全く違います。近隣の老健施設とも異なります。施設自体が「家=生活の場所」であり、利用者さんは家に近いスタイルで過ごすことになります。外出もしたいし、おいしいカレーやケーキも食べたい・・・そんな思いを叶えてしまうスタッフです。

 リスク管理というコンセプトからも離れています。「転倒しないように」、「インフルエンザや、ノロウイルスにかからないように」という日本が求める介護施設のコンセプトではありません。転倒してもいいのです。その代わりに骨折しない体を作りましょう。しっかりした体力づくりを目指します。インフルエンザやノロウイルスが体に入ってもいいのです。肺炎や脱水にならない体を作って、ウイルスを排除する体を作りましょう。なぜなら、施設で3ヶ月間過ごした後は、家に帰るのですから。

 現状で、6割が自宅に帰って行かれる施設は、滋賀県内を見渡してもそれほどないと思います。家に帰っても、医師や看護師やヘルパーさんが守っていけて、安心して住み慣れた家で過ごせる地域を増やしていければ、と思います。『地域循環型老健』が私たちの考えです。

元気になって!

B地域医療の後継者

 若い医師の確保は、今後も継続したいと思います。他の医療機関では体験できないようなプログラムを作っています。特に、地域のデイサービスに行ったり、障害者施設に行ったり、社会福祉協議会に行ったりして、医師以外の仕事をしてもらいます。住民の生活の中で、医療の占める部分はそれほど大きくない。それを知らない医師が多すぎるように思います。地域医療の原点は、患者さんの生活背景や歴史丸ごとを把握すること。病気を治すのではなく、住民を元気にするような医師になって欲しいと思います。
地域医療とは、
1.その地域を愛し、誇りを持つこと
2.医療者のための医療ではなく、住民に喜ばれ評価される医療であること
3.行政と仲よくすること
4.地域包括医療を展開すること
5.医療を通して地域社会(まちづくり)に貢献すること

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