政策フォーラム滋賀 定例研究会 「滋賀県民が望む医療政策・地域医療」

上記研究会に招待いただき、講演とパネルディスカッションに参加してきました。県会議員さんや各種団体の長となる方々20〜30名ほど集まっていただき、自分の拙い話をきいてくださいました。政策的なことは私には詳しくわかりませんでした。   以下プログラム

日時:2008年1月13日(日) 13:30〜16:30
場所:男女共同参画センター(近江八幡市内)視聴覚室

第1部:基調講演「家族と本人が望む地域医療」
講師:畑野秀樹さん(「地域包括ケアセンターいぶき」センター長)


 地域医療とは?超高齢社会の中で家族も患者も安心して医療や介護を受けられる医療とは?
 旧伊吹町(現米原市)を中心に地域医療を実践し、患者や家族を医療や介護の充実で支えている「地域包括ケアセンターいぶき」センター長の活動報告を通して、病気、介護、死について考えます。

第2部:パネルディスカッション 「滋賀県民が望む医療政策・地域医療とは」
パネラー
 畑野秀樹さん(地域包括ケアセンターいぶき所長)
 角野文彦さん(東近江保健所長)
 小梶 猛さん(NPO法人しみんふくしの家八日市理事長)


医療「計画」あって「政策」なし。国も自治体も長期的な医療政策について議論を回避し、介護や医療の保険会計の運営に焦点を当てた財政面からの医療「対策」が主流でした。結果として、患者や家族の医療への過度の依存体質、各保険会計の連携もはかられない中での赤字体質、公立病院の経営危機、産科・小児科を含む救急医療の不安などの問題が噴出してきました。
 こうした医療不安を解消し、滋賀県民が望む医療政策を確立するにはどうすればいいのか。地域医療の実践者、保健・医療行政現場の責任者、市民が望む医療や介護を考えるNPO法人理事長によるパネルディスカッションを通して医療政策のあり方を模索します。



本人と家族が望む地域医療 地域包括ケアセンターいぶきの取り組み 要旨

滋賀県米原市 地域包括ケアセンターいぶき 畑野秀樹

今日のテーマ
  @地域包括ケア
  A在宅医療と地域連携
  B緩和ケア

いぶきの運営理念
  @地域医療に力を注ぎます
       医療の過疎地を医師複数体制で。外来と、在宅医療を。訪問看護ステーションを立ち上げ。特に、リハビリを充実させる

  A近隣病院との機能分担を行います
       米原市には入院できるベッドがない。
       市立長浜病院(500床)、長浜赤十字病院(500床)、 国保関ヶ原病院(200床)との連携。
       急性期は病院、亜急性期〜慢性期は診療所
       出張所として既存の4診療所は残す

  B保健・医療・福祉を融合した施設にします
       
  C老健・デイケアの理念は「在宅へ」
        「在宅支援」と「リハビリ」が2本の柱。家に帰すことを念頭に置いた入所施設
       老健入所期間は、3ヶ月を限度に。15人以内のユニットで、家庭的な個別対応を目指す
       2床の緊急ショート枠。家に帰っても継続したケアを

  D地域医療を目指す若い医師の育成に力を入れます
       東京、神奈川、静岡、石川、愛知、岐阜、滋賀、奈良から医学生・研修医さんを受け入れ・・・
       若いうちに地域医療の視点を持っていると、医師は変わる・・・

  E地域住民が安心して暮らせるために努力します
        病院の医師は「臓器」専門化していますが、私たちは地域住民との心と心のつながりを大切にしたい
       地域医療、在宅医療、家庭医療、総合医療、全人的医療

地域包括ケアセンターいぶき 職種
  医師 3名、看護師 21名、介護士 25名、理学療法士(PT) 3名、作業療法士(OT) 2名
  薬剤師 1名、管理栄養士 1名、事務他 6名     計63名

地域医療とは?
  @その地域を愛し誇りを持つこと
  A医療者のための医療ではなく住民に喜ばれ評価される医療であること
  B行政と仲よくすること
  C地域包括医療を展開すること
  D医療を通して地域社会(まちづくり)に貢献すること
    (宮城県涌谷町医療センター青沼先生のスライドより引用)


在宅医療
  (例)大腿骨頸部骨折や脳血管疾患・・・急性期は病院で→施設へ(老健など) →家へ
  「地域が病院、家がベッド、電話がナースコール」、24時間体制、他機関との連携により、重度でも独居でも帰れる

在宅医療とは?
  住民が本当に望んでいることは何だろうか?
  急性期が終われば、できるだけ早期に住み慣れた家に帰って家族とともに自分のリズムで生活したいのではないだろうか
  できるだけその希望を叶えることが地域の医師の役割ではないだろうか

在宅医療を応援するわけ
  家の中に (生)、老、病、死がある
  生きることの大切さが、若い世代に伝わる
  現代は、8割が病院死、2割が在宅死
  病院での生活は、患者さんにとって幸せか?
  家で過ごしたい人は、家に帰したい
  赤ひげ先生よもう一度・・・
  30年後、60年後の日本のために

在宅医療は一人ではできない
  重度でも(完全寝たきり、胃瘻栄養、重度認知症)、一人暮らしでも、家で過ごせる
  医師・看護師・ホームヘルプ・デイサービス・デイケア、理学療法士・作業療法士・・・多職種協働


在宅における緩和ケア
  癌患者さん・・・苦しさ、痛み、倦怠感、食欲不振など、精神的な苦痛
  「家で過ごしたい」理由・・・家族がいる、気楽である、自分のペースで生活できる、自由である
  医療者側のサポート  24時間体制、ペインコントロール、輸液、潰瘍などの処置
  介護保険サービス  入浴介助、リハビリテーション、訪問看護など

在宅でどこまで医療を行うか?
  希望を尊重しながら、ある程度診療所医師がリーダーシップをとる ・・・中心静脈栄養、胃瘻、人工呼吸器・・・
  褥創、ターミナルケアなど、病院との連携を取りながら、窓口を広く受け入れる。
  患者宅には医師の携帯電話番号を知らせる →家族はいつでもつながっている安心感から、逆に夜間の電話は少なくなる。
  在宅医療は地域づくり
  親子の思いやり、家族のつながり
  老・病・死を家族に見せることは、次世代に「生」を教えること =「高齢者は教育者」という地域づくり
  30年後、60年後に、なおも家族の絆を大切にし、思いやりを持てる地域づくりをしていくためにも、在宅医療は大切にしたい

まとめ
  在宅医療は、思いやりのある地域づくり(まちづくり)のチャンスである
  「生きること」を高齢者が若い世代に伝えていく大切な教育の場である
  地域の資源をどんどん使い、多職種協働
  後方病院の存在が、医師にとっても、患者・家族にとっても安心となる。
  診療所医師ができることは、24時間の支援である(つながっている安心)。


パネルディスカッション「滋賀県民が望む医療政策・地域医療とは」

@地域医療に関する理想の姿、地域包括ケアセンターいぶきでの取り組みに関する感想
  地域医療を進めるのは大変なことであるなあ。
  医師一人では地域住民を支えることは困難で、多職種協働が必要となる。
  地域連携クリティカルパスの運用・・・「家に帰る」取り組み。
  医療バブルがはじけた今(医療崩壊の時期)は、住民は「医療機関にかかる」ルールを学ぶこと
 
A医療圏、救急医療、医師不足の問題について、医療行政現場からの問題提起と解決方法。 医師の立場から医師の処遇について。
  医療圏は、滋賀県に2次医療圏が7つ→4つでよい
  救急は、住民自らが医療のコンビニ化利用により、地域医療を崩壊させている部分もある
  妊婦は健診をうけることなど、救急医療体制の前に、常識的な自己管理をお願いしたい(奈良のたらい回し事件)
  医療費の不払いなどの問題
  医療機関の機能特化が必要・・・病院と診療所、専門分野の棲み分けなど。

B質問・要望
  助産師より・・・医療法19条の改訂により、助産師が開業できなくなる。家で生みたい人のために法整備を。
  夜間救急を利用せざるを得ない母親の立場より・・・母親教育の充実を。

  在宅医療への違和感を感じる。長命か?長寿か?  患者の意思を尊重し、患者や家族が安心できる医療・介護の整備を。
  
  往診してもらえる医師を増やして欲しい。在宅でフォローしてもらえる医師の間での連携を進めて欲しい。

C医療政策について、公立病院経営はの問題提起。
 これまでの医療政策に欠けていた視点、解決されなかった問題点への問題提起
  公的病院のほとんどが赤字。病床利用率が低い。
  総合病院でなく、地域の実情にあった診療施設を。
  住民が自分たちの医療機関を守ろうという意識の成熟が必要では。
  医療や介護の枠にとらわれない、滋賀県の医療政策大綱づくりを行う。