似た薬とその対応について 2009.2.16

胃腸炎の症状を起こして来院された患者さん。薬を処方して、症状はまもなく治りましたが、後から家族の方が「薬が違う」ことに気付かれ、連絡していただきました。本当に申し訳ないことで、改めてお詫び申し上げます。

一方で、間違いが起こった原因があるはずで、改善していきます。
処方してから薬をお渡しするまで
1.医師が患者さんを診てから、電子カルテ上で、薬剤を選びます。
2.電子カルテのモニターを見せながら、患者さんに出す薬の絵と飲み方を説明します。
(医師自身によるダブルチェックと、患者さんへの説明)
3.電子カルテから、薬局に処方箋を飛ばします。また薬袋印刷を行います。
4.薬剤師は、処方箋と薬袋をチェックしながら、薬を出します。
2度確認してもらいます。(薬剤師によるダブルチェック)
5.窓口にて、事務員が処方箋と薬袋と、中に入っている薬が合っているかチェックします。
したがって、4〜5回は、医師・薬剤師・事務員によるチェックがされるのですが、それでもすり抜けてしまったケースがありました。


プリンペラン と ブスコパン・・・よく似ている

プリンペラン と ブスコパン・・・文字の色が同じ
患者さんは、胃腸炎の症状で、微熱、むかつき(嘔気)と軽度の腹痛がありました。医師はプリンペランを処方しましたが、患者さんにはブスコパンが渡ってしまいました。プリンペランは、胃腸の動きを活発にして、むかつきを改善する作用があります。ブスコパンは、胃腸の動きを止めて、腹痛を和らげる作用があります。いずれも胃腸の症状をよくする薬で、患者さんは両方の症状があり、結果的には症状はよくなりました。

ご覧の通り、とても見た目はよく似た錠剤で、しかも包装も似ています。「プ○○ン」と「ブ○○ン」という音韻もよく似ています。500種類以上の薬棚の中でも50音順にしていると、同じ列になります。1日100人以上の患者さんの対応をしていると、誤って薬袋の中に入れてしまう可能性があることがわかりました。

対策として、
1.確認の徹底を更に行う。しかし今以上にやるとなると、薬剤師を2人置くことや、確認する看護師を置くことなど、スタッフの増員が必要になります。院外処方にして、院内薬剤師の負担を軽減することも一つの方法です。
2.現状ですぐにできることは、似た薬は置かないことでしょうか? どちらも昔からある先発品で医療機関ではとてもメジャーな薬ですが、ブスコパンには後発品がないそうで、まずはプリンペランを後発品にして、薬の名前を変えること、包装の色を変えることでも対応したいと思います

ニュースでは、注射薬のサクシゾン(ステロイド薬)とサクシン(筋弛緩薬)を間違えて、呼吸停止となったケース。同じく注射薬のホスミシン(抗生剤)とボスミン(ショックに対する薬)を間違えて、やはり命にかかわる問題になったケースが取り上げられています。内服薬では、アマリール(糖尿病の薬)とアルマール(血圧の薬、ふるえの薬)が間違われたケースがありました。

当方では、似た薬は避けているのですが、1万5千種類以上ある、日本の薬について、もっと減らして欲しいと思うと同時に、安全策について医療業界自体が考えていく必要があろうかと思いました。