在宅医療推進市民公開フォーラム

平成22年3月13日(土)
長浜市浅井文化ホール


◆基調講演 「湖北地域の在宅医療の現状と課題」

湖北医師会 滋賀県医師会 橋本修先生(長浜市 橋本医院院長)
在宅医療とは
在宅医療の内容
自宅死亡
全国 滋賀県 湖北
平成20年 12.7% 15.4% 20.6%
死亡場所別にみた都道府県別死亡者数の割合(平成20年)
自宅 病院 診療所 老健 老人ホーム
1.奈良県 15.8% 76.9% 0.5% 0.6% 3.7%
2.大阪府 15.5% 78.5% 0.8% 0.4% 2.2%
3.滋賀県 15.4% 79.0% 0.2% 0.5% 2.4%
4.兵庫県 15.3% 75.8% 2.2% 0.7% 3.8%
5.東京都 15.1% 78.6% 1.4% 0.4% 2.7%
45.長崎県 9.0% 79.1% 5.3% 1.2% 3.1%
46.福岡県 8.9% 84.3% 2.1% 0.7% 1.8%
47.北海道 8.6% 84.0% 2.7% 0.7% 1.5%
在宅医療推進のコンセプト(滋賀県医師会)

 1.地域医療は面で支える
 2.在宅医療は24時間、365日をめざす
 3.かかりつけ医がスムーズに看取りまで行える体制、患者からみれば、かかりつけ医に最後まで診てもらえる体制が必要
 4.医師の公的使命に裏打ちされた自立的対応が求められるが、バックアップする地域医療システムの確立が伴わなければならない
 5.地域医療の現状に応じ、できることからまず第一歩を踏み出す
在宅医療推進のための提言(滋賀県医師会)

 1.在宅療養支援センター(仮称)の設立
 2.診療所ネットワークの構築
 3.病診連携の充実
 4.多職種との連携の充実

◆パネルディスカッション

コーディネーター 畑野秀樹(米原市 地域包括ケアセンターいぶき 医師)
助言者 橋本修(長浜市 橋本医院 医師)
 それでは,パネルディスカッションに移らせていただきます.私はコーディネーターを務めさせていただきます米原市の地域包括ケアセンターいぶき医師の畑野と申します.よろしくお願いします.
 本日のパネルディスカッションのテーマは,「安心して自宅で過ごせるために」ということです.先ほどの基調講演の橋本先生のお話にもあったように,高齢者が急速に増えていっています.しかし入院ベッドや介護施設のベッドはそれに追いついていく事ができていません.また,病院や老人ホームでの生活や看取りが本当に幸せなのかどうか.最期は自宅でなくなりたいという人が6割もいらっしゃるのに実際には15分しかできていません. それでも湖北地域では比較的高い割合で自宅での看取りがされており、滋賀県の中ではある意味先端医療が行われているようです。
 そこで在宅にて,住み慣れた我が家にて,できるだけ幸せに過ごしてもらうことを考える目的で,今回のパネルディスカッションをさせていただきたいと思います.
 パネラーの方々のご紹介をしたいと思います.住民の代表として長浜市にお住まいの仁添智恵子さん.要介護者に生活を支えていただくのがケアマネージャーという職種のなのですが,そのケアマネを代表して湖北介護専門員連絡協議会の鏡山昌由美さん.在宅でも専門的な看護サービスを提供する訪問看護師を代表して訪問看護ステーションりぷるの小倉敦子さん.長浜赤十字病院で病院と診療所の橋渡しをしていただいている中村誠昌先生に来ていただきました.
 それぞれのパネラーの皆さんには,各々の立場から10分程度の話をしていただきます.その後,かかりつけ医を代表して橋本先生にご助言いただき,ディスカッションをしたいと思っています.またフロアの皆さんにもどんどん,ご質問やご意見をいただいて,実りあるパネルディスカッションにしたいと思います.このフォーラムが終わる頃には,来てよかった,参加してよかったと思っていただければと思っておりますので,ご協力のほどよろしくお願いします.
◆まずは,住民代表の立場から,仁添さんにご発表いただきます.仁添さんは昨年お母様を看病され,そして自宅で看取りをされました.その体験をふまえての発表です.よろしくお願いします.
患者家族の立場から 仁添智恵子さん
家で看取る不安と最後の日
家で介護する大変さ
家で介護してよかったこと
サービスを利用して
介護している人の話を聞いて
病院と開業医
最後に
在宅介護を経験して、@介護者の心身の健康と体力と気力、A時間のゆとり、B家族の理解と協力、C支えてもらえる社会 が必要
行政に対して、医療・福祉サービス事業者に対して、共倒れにならない介護体制づくりをお願い
 仁添さん,ありがとうございました.簡単には在宅がいいとは言えない介護のご苦労を話していただきました.家族で患者さんを見ることは不安も大きく,体力的にも,経済的にも大変なことがわかりました.一方で,家ならではの,お孫さんとの会話であったり,家族が協力して支え合う体験によって二添さん家族も成長されたように思います.家族だけの負担にならないように,医療や看護,介護のサポートも大切なことが改めてわかりました.ありがとうございました.
◆次に,患者さんや家族の生活を支援する仕事をしていらっしゃるのが,ケアマネージャーです.湖北ケアマネ協の鏡山さんには,ケアマネの仕事について話をしていただき,在宅療養を支えるための考えや工夫についてお話いただきたいと思います.よろしくお願いします.
ケアマネージャーの立場から 鏡山昌由美さん(湖北介護支援専門員連絡協議会 ケアマネージャー)
安心して自宅で過ごせるために
介護保険の基本理念
介護保険利用のための流れ
ケアマネージャーの決定
在宅療養について
自宅での療養生活を支援して
「最期まで自宅で過ごしたい」本人の思い、「最期まで自宅で過ごさせてやりたい」家族の思い、同居以外の家族も同じ思い、かかりつけ医が在宅療養に協力的、医療・福祉の適切な支援
 鏡山さん,ありがとうございました.今の時代は,医療と介護という2つの車輪がうまく回っていく必要があります.生活を支える支援者としての役割をケアマネージャーさんが担っているわけですが,一般の人にもわかりやすく,ケアマネの仕事をご発表いただきました.また,1例を挙げていただきました.住み慣れた我が家で子どもや孫に見守られて最期を迎えることは,幸せなことだと言うことがわかりました.そのためには,家族の「家でみる」という強い気持ちと,かかりつけ医の存在が必要であることもわかりました.

◆3人目は、訪問看護ステーションりぷるの小倉さんに発表いただきます。先ほどの仁添さんの在宅療養を支えるために看護師として入っていただきました。かかりつけの医師も、昼間はたくさんの外来があり忙しく、なかなか一人の在宅患者さんにつきっきりにはなれません。ご家族の不安を軽減する強力なスタッフとして訪問看護師がいらっしゃいます。患者さん・家族と医師の間に位置して、安心して介護が続けられるように努力しておられることに私たち医師としても感謝しています。
 小倉さんには、訪問看護師のおかれている環境について、仕事の内容について話をしていただきたいと思います。
訪問看護の立場から 小倉敦子さん(NPO法人みらい 訪問看護ステーションりぷる 訪問看護師)
NPO法人みらいについて
訪問看護は何をしてくれる?
在宅看取りについて実績
ある一人の患者さんを見送って思ったこと
訪問看護を利用するには
今後の活動方針
患者さんには、家にいたいという強い意志がありました。それに応えたいというご家族皆様の協力がありました。往診に来ていただいて、いつでも相談に乗っていただけるかかりつけ医の存在がありました。ご家族・主治医・訪問看護がチームとしてうまく機能できたと思います。
 小倉さん,ありがとうございました.24時間の安心を支えるために努力していらっしゃる姿がわかりました.診療所の医師は一人体勢であることがほとんどで,24時間体制ですと,体が持たないということも感じています.その部分を看護師さんがチームとして対応していただけると医師も助かります.一方で,その処遇はまだまだ改善しないと,訪問看護をしていただける看護師さんも増えないのかなと思いました.ありがとうございました.
◆最後に,長浜赤十字病院地域連携室の中村先生にご発表いただきます.中村先生は外科医でもあり,私も患者さんを紹介させていただいていますが,病院の地域連携室でどんな仕事をしていらっしゃるのか,あんまりわかっていないのが実情です.市民の方々もおそらく病院と診療所を連携を橋渡しする地域医療連携部門の役割についてご存じない人もいらっしゃると思いますので,今日の話には大変興味を持っています.中村先生,よろしくお願いします.
病院医師の立場から 中村誠昌先生(長浜赤十字病院 医療社会事業部 医師)
病院ベッドの区分
湖北地域の病院の内訳
病院から在宅へ・・・退院後に家で過ごせない要因、 退院調整
在宅から病院へ・・・病診連携、開放型病床
病院から在宅医療への支援(地域医療支援病院)
 中村先生,ありがとうございました.病院に入院した患者さんを,どのようにして安心した状態で家に帰すのか.その方法についていろいろと努力いただいている様子がわかりました.病気が治ってぴんぴんして家に帰ることができるといいのですが,患者さんによっては高齢や障害のために十分に回復できないまま退院せざるを得ないこともあります.様々な取り組みについてお話いただきました.ありがとうございました.
◆以上4人のパネリストの方々に話をいただき,大変学ぶことが多くありました.次に,かかりつけの医師の立場から,橋本先生のご助言をいただきたいと思います.橋本先生は皆さんもご存じとは思いますが,長浜赤十字病院で長い間神経内科医として従事され,今は旧びわ町で開業されています.認知症の患者さんや神経難病など,治すことの難しい患者さんもたくさん診てこられました.病院医師の立場もご存じですし,診療所医師の立場もご存じです.また滋賀県医師会としての立場もおありだと思います.今回の4人のパネリストの発表に対して,ご意見をお願いします.
◆さて,ディスカッションをしていきたいと思います.
仁添さんへ・・・在宅で最期を迎えられたことを振り返ってよかったとのことでしたが,最期は入院させてしまいたいと思わなかったのかどうか? ケアマネや訪問看護,かかりつけ医,デイやショートステイで,もう少しこうして欲しかったと言うのがあればお聞きしたいのですが.
介護を楽にするための情報がわかりやすくパンフレットなどになっているとよい。(例:おむつにS,M,Lがあることなどから)
介護者同士のネットワークがあるとよい。苦労を分かち合い、介護の工夫がわかる人との対話の機会
鏡山さん、小倉さんには、ケアマネ、訪問看護師の立場から、仁添さんの希望に対してのアドバイスをいただきました。
中村先生へ・・・肺炎を起こしたりして入院し,やはり食事が摂れない場合に,胃に穴を開けて胃瘻栄養という方法で流動食を入れる方法があります.そのような方を家に帰す方法としてどのような工夫をされていますか? また病院では栄養サポートチームや褥瘡対策チームなどがあると聞いていますが,取り組みについて教えていただけますか?
◆フロアより、滋賀県健康福祉部長 漣部長に、今回のフォーラムに対するご意見を伺いました。
◆フロアより、余呉町のIさんのご意見。介護保険の対象になっていない障がい者を介護する親として、家族が安心して子どものことを任せていける在宅サービスや施設の整備について、滋賀県や湖北医師会に対して対策を講じて欲しいとのこと。
◆時間も迫ってきました.今日はパネリストの皆さんや助言者の橋本先生,またフロアの皆さんと一緒に,この湖北地域において,どうやって自宅で安心して過ごすことができるだろうか? 湖北地域の優れているところもわかってきましたし,足りない部分についてもわかってきたと思います.今日のフォーラムを意見を持ち帰ってもらって,自分たちの問題として,この地域をよくしていこうというエネルギーに変えていただければ,今日のフォーラムは成功だったと思っています.
医療と看護,介護の専門家と市民の皆さんが協力して,信頼しあえる湖北地域にできればと考えています.今日は本当にありがとうございました.最後にパネリストの皆さん,橋本先生に盛大な拍手をいただけましたら幸いです.

パンフレット