「私たちの地域」の地域包括ケアの実践を

2012.5.6
地域包括ケアセンターいぶき 畑野秀樹


平成24年度の医療保険、介護保険制度が改定されました。十分な社会保障の財源確保が難しい中、そしてこれからさらに進む少子高齢化社会を見据え、厚生労働省は、「病院から在宅へ」「施設から在宅へ」と舵を切りました。在宅復帰、在宅支援を進める施設に、高いポイントを与えるよう誘導しています。

その内容は、   (「老健」平成24年5月号より引用)

1.「在宅サービスの充実と施設の重点化」
・・・地域包括ケアの考えに従って、できるだけ軽度の人は自宅で、自宅が難しくなった人は居住系、それでもなかなか難しい重度の人を施設が受け入れるという視点。

老健においては、
@緊急ショートステイへの評価
A認知症が悪化して在宅での対応が困難になった場合の受け入れの評価
B個室ユニット化
C栄養改善サービスと口腔機能向上の取り組み
D在宅復帰率と回転率により点数を上げる(50%、10%)
E老健施設内での医療の評価(肺炎や腎盂腎炎、ヘルペスなどは病院ではなく老健で治す)
F施設で貢献ではなく、地域へ貢献を期待


2.「自立支援型サービスの強化と重点化」
・・・予防やリハビリを強化していくという視点。
 訪問介護と訪問リハビリの連携の推進。
 訪問リハビリへの高い評価・・・老健施設からも訪問リハが可能に。また医師の診察を緩和した(毎月→3ヶ月に1度の診察で可)、サテライト型の訪問リハビリも可能に。
 通所リハビリについても評価を

3.「医療と介護の機能分化・連携」
 看取り機能の強化
 「最期は病院で看取ってほしい」という希望が、病院側スタッフへの負担を招いており、介護施設における看取りが進むように・・・安寧な施設看取りをスタッフが提供できるように

4.「介護人材の確保とサービスの質の向上」
 介護職員への処遇を改善する・・・介護士の社会的な評価を高めるとともに、介護職員の質も高めてもらう。

以上のような厚生労働省の改定は、地域包括ケアセンターいぶきにとって、現在実践していることであり、日本全体で進むべき(進まざるを得ない)方向が示されたと思います。 

いぶきでの取り組み
1.医療と介護の統合

医療と介護をドッキングした施設として、診療所、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、リハビリテーション(通所リハ、外来リハ、訪問リハ)、老健を包括しています。診療所は在宅支援診療所として、医師複数体制で地域の寝たきり高齢者を24時間でバックアップしています。医療依存度の高い人に対しても、訪問看護ステーションと連携して24時間つながるようにしています。
2.老健の「中規模多機能施設」としての役割

老健は、60床のうち30床をロング(3ヶ月を限度)として、在宅復帰率を90%にしています。・・・要介護4・5の人が7割
30床をショートステイとし、1ヶ月の入退所が350人前後、平均入所期間は4日間という特殊な施設になっています。
緊急ショート枠を2床は確保し、家族の病気などに対しても対応できるようにしています。
ショートステイを含めた全ての人に対してもリハビリを提供し、ショートステイ利用中に元気になって自宅に帰ってもらえるようにしています(ただし看取りの人は除きます)。
栄養や口腔機能に対して、管理栄養士や歯科衛生士、作業療法士を中心に歯科医師や医師、看護師、介護士が協力して、「口からおいしく食べる」ことに力を入れています。
認知症の周辺症状が強く家族が疲れてしまっているケースにも、ショート中に認知症ケアを行い、薬を調整して、穏やかに過ごしてもらえるよう工夫しています。(アリセプトなどの薬により、ご本人が混乱して疲れているケースもあり、ケースバイケースで使用します。認知症の人の感性はとても優れており、その感性を維持しつつ、居心地のよさを提供します)
3.住み慣れた場所で最期まで

治療が終わった方が自宅で過ごせるような工夫をすること、また老化によるADLの低下については、病院に入院せずに自宅あるいは老健でみることができるように、特にグループホームや特老などに入所している人も住み慣れた場所で住み続けることができるように工夫することが大切になってきました。地域の医療機関や介護施設が変わってきていることを実感します。

特に、看取りについて、ご本人にとって安心できる環境を作ってあげることができるよう医師や看護師、介護士が力を合わせる時が来ました。がんの患者さんにおいて、できるだけ苦痛を取り除いてあげるよう努力し、自宅療養を支援します。まさにチーム医療・ケアの取り組みです。
4.「施設のために」から「地域のために」へ
施設のために仕事をするのではなく、地域のために住民のために努力をする時代になったようです。自分の施設の事だけでなく、社協や、他のデイサービス施設、グループホーム、ケアハウス、特老などとの協働をめざします。また家族とのつながりを大切にし、「いのちの教育」の場所として、家(あるいは施設)を使いたいと思います。