歯科と栄養 食でつなごう会 勉強会 in いぶき

2013.4.7 地域包括ケアセンターいぶき デイルーム




プログラム

1) 活動報告『ケアセンターいぶきの食支援』 ケアセンターいぶき 理学療法士 清水智也

2) 特別公演 『今、在宅医療に摂食・嚥下機能管理のエキスパートが必要です ~産声をあげたおうみ在宅療養連携シート~』
 大津市 西山医院 西山順博 Dr.
3)グループワーク 『模擬退所時カンファレンスをしてみよう、参加しよう』
 進行役 ケアセンターいぶき 臼井恒仁Dr, 石黒幸枝歯科衛生士
医師、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、ケアマネージャー、特老施設長、看護師、作業療法士、言語聴覚士、栄養士、生活相談員、介護士、介護福祉士、おむつフィッター・・・などの多職種が集まり、『食』を通しての勉強会が開催されました。この会を主催し、司会進行だった石黒幸枝さん(滋賀県歯科衛生士会長)、お疲れ様でした。東京、愛知県、岐阜県、三重県からも来ていただき、顔つなぎができたのも石黒さんの「つなぐ力」のおかげだと思います。今回の会合を通して、さらなる連携の発展を祈ります。
石黒さん、畑野先生はじめケアセンターいぶきの皆さん、本日はありがとうございました。
沢山の出会いや再会、新しい勉強もでき充実した一日を過ごすことができました。
やる気満タンとなりました!
地域に根ざし、支えていける連携を作っていけるよう励みます(*^^*)
 
今日は皆様本当にありがとうございました。西山先生のお話の『世間よし』になることを目指して様々な方と協力しながら一歩一歩積み重ねていかないとと思いました。今後ともよろしくお願いします。  石黒先生、畑野先生、谷口さん、伊吹のスタッフの皆さん今日はありがとうございました!^o^
みなさんの、やる気がすごく伝わって来て、また、明日から頑張るぞ〜ってやる気が湧いてきました!(^-^)/
誠実に愛やぬくもりの持った介護をする事が福祉の原点なんだなぁと改めて気づかされました。また、いろいろなところで出会う事があると思いますがよろしくお願いします!(^-^)
 
石黒さん、畑野先生、いぶきの皆様、参加された皆様、今日は素敵な時間をありがとございました。

グループワークの発表の機会には固まって(-_-;)しまった所を助けて頂くなどグループの方々にも大変お世話になりました。

今日学んだ事を心におき、今春から関わる通所施設で成長出来る様に頑張ます!本当にありがとうございました。
 
 畑野先生、ありがとうございました。ケアセンターいぶきのようなチームになっていけるように!!啓発活動していきます。今後ともご指導よろしくお願いします。 西山先生。大変貴重な講演を聞かせていただきありがとうございました。とても濃い内容であったのに消化できました。大津の医師会素晴らしですね。 
 今日はありがとうございました。
皆さんとたくさんのお話が聞くことができて大変有意義な時間を過ごすことができました。私自身もっともっと経験を積み、誰のためでもない患者さんやサービスを受ける人のための医療、福祉を実践していかなければと改めて感じました。もっともっと歯科医師もチームのなかに参加していかないとと思いました。
5月から私は新しいスタートを切ります。今日の西山先生の『世間よし』になるように一歩一歩積み重ね頑張りたいと思います。
  畑野先生・石黒さん ケアセンターいぶき 最高の施設・最高の地域ですね!うらやましい限りです!! また、本日は 多くの方との素晴らしい出会いをありがとうございました。 昨日「歯科と栄養 食でつなごう会勉強会」の参加しました。普段、特養の方々との交流が主ですが、医師、歯科医師、歯科衛生士、栄養士、看護師、介護、その他、本当に多くの他職種の方々の集まりで、最初は私が参加するのが場違いな感じを受けていたのですが、このところ、こういう機会に参加させていただくにつけ、他職種での連携が如何に大切か、痛切に感じました。「地域包括ケアセンターいぶき」の取組み、本当に素晴らしかったです。ただ、私たちも素晴らしいと言ってずに、自分たちの取組みとして実践していかなければならないと痛感しました。
石黒さん、畑野先生、いぶきのスタッフのみなさん、本当にありがとうございました。
畑野先生、石黒さん、またいろいろとご協力をお願いいたします。
 

1) 活動報告『ケアセンターいぶきの食支援』 
       ケアセンターいぶき 理学療法士 清水智也

いぶきの理念
地域医療に力を注ぎます
近隣病院との機能分担を行います
保健・医療・福祉の融合した施設にします
老健・デイケアの理念は「在宅へ」
地域医療を目指す若い医師の教育に力を入れます
地域住民が安心して暮らせるために努力します
施設概要
無床診療所(5ヵ所+1)・・・ケアセンターいぶき、吉槻診療所、板並出張所、大久保出張所、近江診療所。米原診療所(医師派遣)
訪問看護ステーション
居宅介護支援事業所
デイケア(1日定員25名)
介護老人保健施設(60床、うちショートステイ25床)
食支援にかかわるスタッフ
管理栄養士(1)、歯科衛生士(1)、理学療法士(5)、作業療法士(3)、言語聴覚士(1) お口のケアチーム
老健(介護老人保健施設)
理念は「地域支援とリハビリ」 60床
入所期間は3ヶ月を限度とする・・・在宅復帰率8~9割
ショートステイを増やす・・・30床、1日平均10名の入退所、平均4日間
看取りOK。亡くなる直前に家に帰ることも 年間5名程度
口腔機能維持管理体制加算、口腔機能維持管理加算を適用
認知症ユニット(しもつけ・ささゆり)
認知症という病気の特徴を捉えたうえで食について取り組む・・・五感に働きかける、環境を整える。雰囲気づくり。
食事介助の危険性を認識し、マンツーマンで対応する・・・座席位置の検討。得手の確認
情報の共有を図るため、小さな変化を日々会話の中で流す
リハ強化ユニット(りんどう・ゆうすげ)
見守ることを大切にする。自立を支える
その方にふさわしい環境(食器・道具・場所など)を提供・・・背の高い人には机を補高。リウマチの人には軽い茶碗。視力の悪い人には黒い茶碗。滑り止めや介助皿の提供。座る場所や向きの工夫。
服薬に関しても自立の人が多い・・・利用者の手のひらに載せた薬がこぼれないように介助者が手を添え、飲み込むまでを確認する。
胃瘻造設となっても、経口摂取について検討する(評価・実施・再評価)
寒天食として、経口摂取ができたケース・・・自分でつかむことができる、体温で融けない、家族の作った食べなれた味
食べることの意義を考えながら食支援をしていく
老健全体の方針として
食事介助に真摯に取り組む
おいしく、楽しく食事をするために自力摂取にこだわり、用具や形態への変更はスピードをもって対応
在宅との連携や継続ができるように、時には安全よりも継続を優先
認知症ユニットでは最大15人の食事介助が必要となるときがあるが、栄養士、相談員、リハスタッフ、ケアマネなど多職種が協力
「食事介助が理由で入所を断らない」
リハビリテーション科
より安全で、安心な、QOL(生活の質)を大切にした食を
利用者・家族の気持ちや負担を考え、在宅生活を支えていく
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がそれぞれの視点から評価・相談したことを他部門へ広げていく
食事時間はフロアに行き実際に介助する
誤嚥性肺炎予防も含めて口腔ケア・間接的嚥下練習を積極的に行う
ポジショニング指導
誤嚥リスクが高い人
ショートステイの期間を利用して家族・介護スタッフに写真や表を使って、安全な姿勢を周知
在宅やデイサービスでも環境にあった食事をしてもらえるように連携
していることを可能な限り安全に
自助具の作成
その人に合った食事用具の提供
一口の量が多すぎる人は、小さなさじにして長さを調整(自助具作成)
肩が上がらない人は、アームバランサーを作成し腕を支える
本人の自分で食べたい気持ち、家族の自分で食べてもらいたい気持ちを大切に
環境の設定
注意障害があり、片側に改善してしまう人・・・壁を作って反対側から介助し、集中できる安全な環境を
訪問リハビリにおける口腔ケア
唾液の量が多くむせも多い人、口腔内に食べ残しが多い人・・・家族では口腔ケアが難しい
理学療法士により口腔ケアを行う
家の洗面所まで歩行。洗面所だと歯磨きの意識がはっきりし、本人の協力が得られる
家族の在宅生活への不安が軽減
訪問リハビリにおける摂食ケア
誤嚥のリスクが高い人、食べる楽しみを維持したい
訪問リハビリと訪問看護、ショートステイの時に摂食を行う、ゼリー食
必ず摂食前に口腔ケアと吸引、間接的嚥下練習を行う
本人、家族もサービス利用が楽しみになった
スムーズに発声、排痰練習も
栄養科
おいしく食べて、栄養が取れる食事を
栄養委員会で出た意見を献立に反映させる
味付けを安定させるために味見は2人以上で行い、食材の量や組み合わせに配慮
食事の時間はフロアに行く
食事形態は7種類で個別に対応・・・普通、あらきざみ、きざみ、極きざみ、ミキサー、ゼリー
きざみなど口腔内で崩れやすいものは、あんかけをつけて対応
きざみ~ゼリー食は、自宅では取り入れやすいが、見た目があまりよくない
市販のムース食も利用・・・見た目がよく、安定した味が提供できる。お金がかかるため、在宅では取り入れられない家庭もある。
食事の提供
食事について評価するスタッフが多い(介護士、看護師、リハビリ、歯科衛生士)
状態の変化にも迅速かつ柔軟に対応できる関係が築かれてきている
本人によい味、量、形態での食事が提供できるように
歯科医の訪問診療
老健でも在宅でも
「どんな診療、治療もします」
「抜歯も歯科処置も入れ歯の作成も可能ですよ」
リハと歯科衛生士と歯科医師の連携
噛反射の強い人で口腔ケアや歯科治療が困難なケース・・・歯科衛生士より開口補助具の提案。歯科から開口補助具を購入できるように連携
歯科治療中に唾液によるむせが多いケース・・・老健往診中にリハビリが介入。治療中のポジショニングについて提案
訪問リハ時に家族より口腔内から異物が出てきたとリハに相談があったケース・・・歯科衛生士に見てもらい歯の詰め物と判明・・・かかりつけの歯科医に連絡し、往診を依頼
施設退所時のカンファレンス
長期入所者の退所1ヶ月前には本人と家族、センタースタッフ、担当ケアマネ、退所後に利用予定のサービスの担当者が集まる
施設での過ごされ方をみんなで共有し、退所後の生活をどのように過ごていただくとよいか話し合う
食事面については管理栄養士や言語聴覚士を中心に食事の形態、環境、方法などを提案、指導する。
退所前の在宅摂食指導
入所中に嚥下機能が低下し、食事形態を変更した人・・・摂食形態や方法、注意点を家族、ヘルパー、ケアマネに対して直接指導
声をかけると外からも集まっていただける。施設の垣根を感じない
こちらから出向くことも
なかなか管理栄養士や言語聴覚士や歯科衛生士は外には出られない(一人しかいないマンパワーの問題、算定の問題など)
まとめ
食についても職種ごとの専門的な視点で利用者にかかわることができている
全員で考えるとでいろんな可能性を導き出す
内外に限らず一人で悩まずに他の職種と連携する形ができつつある
「こういう時はこの人に頼ればいい」が素早く適切に行えてきている
設備がない分は工夫、技術で補う
専門的な知識はなくても、できることはする
課題
食事介入の際のプライバシーの保護(集団の中での評価や自宅とは違う食事形態の摂取へのストレスの対応)
栄養管理を行う上でのチームとしてのアプローチが不十分。NST+αな包括的食支援を
全ての職種が「地域に出る」「おうちに行く」を
地域に対しての予防的な取り組み
今取り組みだしたこと
今年度から「お口チーム(仮称)」を発足した
栄養・口腔・嚥下・摂食を組織的に評価していけるように取り組む
通所リハに専属の歯科衛生士が加わり、予防も含めた食支援の関わりを始めた

(畑野の感想)
理学療法士である清水君がケアセンターいぶきを代表してプレゼンしてくれました。多職種が情報を共有し合える、問題を共有し合えることを大切にした結果、聞いていただけた皆さんからの評価もとても高かったように思いました。
「病院では安全を優先した栄養・摂食評価がされるのに対して、老健・在宅側からストレスを感じないか?」という質問をいただきましたが、確かに感じることがあります。老健入所後に多職種による再評価を行い、さらに家族との話し合いの上、「食べる喜び」を重視した取り組みをすることがあります。もちろん、もしもの場合の医師のフォローが大切であるとも考えています。

2) 特別公演 
『今、在宅医療に摂食・嚥下機能管理のエキスパートが必要です
    ~産声をあげたおうみ在宅療養連携シート~』
           大津市 西山医院 西山順博 Dr.

ネットワークの設立
滋賀県PEGネットワーク 2004年発足
滋賀県NSTネットワーク 2007年発足・・・在宅での普及を
胃瘻の適応
胃瘻(PEG)の近代史
PEGを味方にすれば町医者は病院に負けない!・・・2001年発刊(小川Dr)
現在、国内の胃瘻患者は20万人
「退院させるために急性期病院では安易にPEGを行っている」という批判が見られる・・・2008年~
摂食嚥下機能の老化
PEGのジレンマ・・・「幸せな」「よい」時期をできるだけ長く、一方で延命だけの胃瘻ならごめん
緩和ケアとしてのPEGなら受け入れられるのでは
滋賀県大津市での地域連携の取り組み
大津市でのPEG件数の推移
PEG術前に専門的口腔ケアをすることで、PEG創部感染は激減した・・・「口腔ケアは必要不可欠」
胃瘻交換報告書
栄養評価報告書
PEGスコープを用いて咽喉頭内視鏡を施行・・・直接嚥下訓練開始につなげた
高齢者・在宅医療にこそ必要な栄養管理
大津保健医療圏における「地域連携パス」の作成・推進体制
PEG地域連携パスの稼働・・・2008年12月より
PEGアセスメントハンドブック 作成・・・カテーテル管理と瘻孔管理・・・基本的ケアからトラブル対処法まで
PEG地域連携パス使用の手引き 作成・・・大津医師会のホームページに掲載
滋賀県医師会栄養管理セット検査 作成・・・客観的栄養評価(ODA objective data assessment)として。免疫能の評価=総リンパ球数(TLC)を使用。栄養状態の評価=O-PNI(Prognostic Nutrition Index 小野寺)=(10×Alb)+(0.005×TLC)。必要エネルギー量の算出。
三方よしの理念
患者(利用者)・家族よし
医療・福祉事業者よし
世間よし
おうみ在宅療養連携シート構想 2012年4月~
岡山 むすびの和 連携シートを参考に
『こころの平安』・・・大津医師会ホームページ参照してください
お役立ちサイト
高齢者ケアに関する意思決定プロセス(日本老年医学会)
京滋 摂食・嚥下を考える会
「PEGのある生活を支援する地域連携」を応援します(大塚製薬)
いい胃瘻(PEG) 「PEG CARE LETTER」 (味の素ニュートリション株式会社)
「PEGアセスメントハンドブック」 (株)メディコン
PEGスキンケアポケットブック (日本コヴィディエン株式会社)
ナースの星QandAオンライン
胃瘻ケア
天のしずく
まとめ
三方よしの三方とは? 患者(利用者)・家族よし、医療・福祉従事者よし、そして世間よしでなければ在宅療養は成就しない
高齢者の人工栄養についての意思統一が必要
病院はキュア>ケアを、在宅はケア>キュアを
大津市では「おうみ在宅療養連携シート」を成就させるために、理念「こころの平安」を作成した。在宅療養にかかわる全てのスタッフが同じ理念で活動していくことが大切である
最期まで最期に「いのちのスープ」がいただける口腔内環境の維持には多職種のみんなの力が必要

(畑野の感想)
西山先生より、大津医師会発信の胃瘻から始まる多職種連携についてお話をいただきました。実際の場面を想像させていただく話しぶりで、現場にいる私たちの心に響く(汗をかく?)話でした。大津医療圏は33万人の人口があるため、あうんの呼吸では通じず、理念を共有する必要があり、そのためにアセスメントツールなどを作成して実際に運用されているのに感心しました。滋賀県・京都府に対しても強いリーダーシップを発揮されており、今後とも是非牽引していっていただきたいと思いました。西山先生、貴重なご講演をありがとうございました。

3)グループワーク
 『模擬退所時カンファレンスをしてみよう、参加しよう』
 進行役 ケアセンターいぶき 臼井恒仁Dr, 石黒幸枝歯科衛生士

ゲンさん、85歳 男性 食べるのが楽しみ  というケースを使い、退所時指導を体験してみました。

普段退所時(退院時)カンファレンスを経験した方は意外と少なく、新鮮だったようです。短い間で役になりきるのは、ちょっと大変だったようで、時間が欲しかったという意見もありました。またケアマネさんが医者の役をするなど、異業種を模擬体験することで、異業種の気持ちがわかったというコメント。家族に専門用語を使いすぎず、わかりやすく説明することが必要に思ったというコメント。多職種の専門的なケアの報告を聞くと、家族には「家では無理」と思ってしまうというコメントもありました。退所後においても継続したフォローアップが必要で、スムーズな申し送りができるよう心掛けたいというコメントもありました。
慣れない役作り、お疲れ様でした。またシナリオを作っていただいた臼井先生、ありがとうございました。