大会の総評と今後の課題
 今大会は男子3位,女子優勝という結果を収めることができた。昨年度の大会から西オーストラリア州選抜チームが年齢ごとのチーム編成から実力ごとのチーム編成になり,実力の高い選手を選抜したHEATのチームに関しては年々レベルアップしていると思う。男子はベスト4に入った4チームに関しては実力の差はあまりないと感じた。その国ごとに持ち味を存分に発揮し戦っていた。日本はHEATとの練習試合では選手相互の連携ミスから0-4で敗戦したが,準決勝でHEATと対戦したときは,試合経験を重ね,連携が格段によくなり,すばらしい試合を展開することができた。敗戦はしたもののHEATにここまで食らいつけたことは選手にとって大きな財産になったのではないかと思う。
 昨年度の遠征で課題に挙げた
 ①相手との距離感。
 ②日本でプレーするときよりも強いタックルに対応できなかった。
 ③ストロークとレシーブの精度に差がある。
以上3点については選手個々の能力や試合経験の中で,大きく改善できた。改善できたことがマレーシアやHEATにも互角に対戦できた要因になっている。
 一方,女子は2年ぶり3度目の優勝を逆転勝利で飾ることができた。決勝戦でHEATと対戦し,1-2の劣勢の場面から鮮やかに逆転した。特に印象に残っている場面は決勝戦の3点目である。集団でボールを奪い,スピードのある選手にボールをつなぎ,1対1からスピードで相手ディフェンスを置き去りにして右45度からプッシュシュートを決めた場面である。この得点は,スタッフの選手起用が的中した結果である。スタッフは選手の状況を的確に見極め,いろいろなポジション,システムを試しながら今大会に臨んでいた。その結果,選手は自分の役割分担をはっきりさせることができ,選手個々の能力を存分に発揮させることにつながった。
 男女のスタッフともに複数回,この大会を経験しているため,選手の起用,システム,モチベーション,選手とのコミュニケーションなど選手の実力を十分に発揮できるようになっていると感じた。また,コーディネーターの小澤さんやトレーナーの森コーチなど,さまざまな視点で選手にアプローチすることで,気持ちよくプレーできる環境が整えられていることも近年の好結果に結びついていると感じる。選手ファーストを実現させるために,多くのスタッフが陰ながら活躍していることにも着目しなければならない。
 この遠征を経験した選手たちが各地元に成果を持ち帰り,多くのことを伝えていただきたいと思う。
 まだ,初めて日の丸を背負った試合としては,日本代表としての誇りや自覚が随所に見られる場面も多々あった。U16の遠征では,中学生という精神的に不安定な年代であり,文化・環境の違いもあり,自分の力を十分に発揮できる選手ばかりではないと思う。しかし,このような経験から多くのことを学び,今後の日本代表としての礎を築くものであると信じていかなければ遠征の意味が薄れてしまう。大会の結果にとらわれるのではなく,海外での経験を重視した遠征であるということを中学校全体で共通理解する必要がある。様々な事情で大きな大会に出場できない選手や志を高く持った選手のため,ひいては日本ホッケーの競技力向上のために,この遠征をさらに充実させたいと思う。スタッフには,中学校の学期末や進路事務の忙しい時期に遠征に帯同してくださることに感謝したい。
 この遠征がさらに充実していくためには,みなさんのご理解とご協力が必要になります。遠征の趣旨をご理解いただき,今後とも温かく見守っていただければと思います。今回の遠征に際して,日本ホッケー協会をはじめとする,ご協力をいただいたすべてのみなさんに感謝申し上げ,総評といたします。
次に繋げるために
 今回,初めて日本代表として,U16オーストラリア遠征参加した選手の皆さん,本当にお疲れ様でした。結果は男子3位,女子優勝でしたが実りの多い遠征になったことがみなさんの感想から伺えました。みなさん貴重な経験ができましたね。
 この結果をどう受けとめ,どんなことを感じていますか?
 君たちが悔しかったり,驚いたり,嬉しかったり,その感じたすべてが,きっとこれからの成長につながり,そして自分のホッケーのプラスになると,私は信じています。
 だから,試合だけでなく,この遠征で経験した様々なことを,ぜひ次につなげて下さい。これからの君たちの行動が,本当に大切なんですよ。
 君たちもこの遠征で学んだことを、仲間や後輩につなげていける人間になって下さい。
 君たちは今回の遠征で,みんなに支えられて今日の自分があること,周りの方々の努力や応援によって,このオーストラリア遠征が成立していること,そんななかで,周りに対する感謝の気持ちを持ってくれたことと思います。1人1人がその感謝の気持ちをどう表していくのか,これからの君たちの行動が大切なのです。だからこそ,4月から高校生になってもホッケーができる幸せにいつも感謝しながら,日々,技術も人間力も高めていって下さい。そうして,技術だけを磨くのではなく,真の人間性を身につけ,これからは周りに対して自分から様々な事を発信できる人間になって下さい。きっと,技術よりもあなたの発言や行動,そして人間性をまわりの方々はいつも見ていますよ。
 誰に見られても恥ずかしくない発言や行動ができる,真の日本代表選手を必ず目指して下さい。君たちの人間としての成長を期待しています。
 選手の皆さんも,人のつながりをこれからも大切にできる人間になってくださいね。
ヨシさん,ヒロコさんのつながりから,2010年からボブさんがこの遠征に加わってくださいました。
 ヨシさんやボブさんはこのオーストラリア遠征のために大会のマネジメントや宿泊,食事など,細部に至るまで,最高の環境で大会に臨めるように尽力してくださいました。そして,日本ホッケー協会の馬場先生のつながりから,毎年,鈴崎さんがカメラマンとして同行し,松村トレーナーのつながりから,森さんが身体のケアを行ってくれるようになりました。畑野先生におかれましては,HPの作成・管理を一手に引き受け,保護者のみなさんや日本で応援している方々に細かな情報の発信をするために尽力されました。この遠征も人のつながりによって,現在まで支えられています。
 君たちが代表に選ばれたのも家族やチームメイト,その中で強い絆が信頼となり,まわりから応援され,それが安心や力となって,自分を伸ばし続けることができたからでないでしょうか?チームの中で自分らしくプレーすることができたからではないでしょうか?
 決して自分一人で上達したり,成長したのではありませんよ。だからこそ,これからも人のつながりを大切にできる人間であってください。人を大切にできる人間は,必ず人から大切にされます。人とのつながりの中でこそ自分が自分らしく力を出し切れるのです。
 オーストラリアで学んだこと,感じたことすべてが君たちの財産です。これからもそれぞれの場所で,人のつながりをさらに広めて,そして深めて,自分らしく活躍し,成長してくれることを期待して遠征のまとめといたします。
                             遠征事務局 吉原 荘二