伊吹町の水道水は、どうしておいしいのか? 

本当においしいのかレポート  



平成14年6月11日

目的: 
1)伊吹町に住んでから、水道水を生で飲んだとき、特においしいと思いました。伊吹町には、いくつかの湧き水の出るところがあり、特に大清水の泉神社は日本名水百選にも選ばれています。今回、娘の小学校の宿題を参考に、伊吹町の水源と、水質について調査したいと思いました。

2)カルシウムの多い水を取ると、腎結石や尿管結石が多いといわれていましたが、最近では逆にカルシウムを多く取ったほうが結石ができにくいといわれています。伊吹町民の結石発症の頻度についても調査をしたいと思いました。

調査方法
1)伊吹町役場水道係の的場さんに水源地について教えていただきました。その後各水源を確認しに行ってきました。

2)各水源の成分表を入手し、検討します。カルシウム分の濃度についても調べました。おいしい水とは何か、アドバイスなどをもらいました。

3)診療所の患者データより、腎結石・尿管結石の患者のリストアップをし、発症が多いのか検討しました。


結果: 

 1)水源

伊吹町の地図を示します。●が水源地です。クリックすると現場の写真が見られます。


伊吹町の最北、甲津原の「伊吹町甲津原簡易水道水源地」です。集落の川向かいにあり、周りは山と田んぼしかありません。甲津原地区にのみ給水します。

 曲谷以北の地質は、花崗岩であり、白亜紀末(7000万年から6000万年前)ごろに,地下深部から上昇し,赤道周辺から移動し現在地に到達していた中生層(砂岩・頁岩・チャートからなる)に貫入したものだそうです。(ご指導感謝→TN&TN様

伊吹山とはまったく異なる地質です。そのため硬度(後述)は10くらいのカルシウム分の少ない水となっています。



曲谷にある「伊吹町北部簡易水道水源地」です。この上流にはダム湖、石臼の採石場跡、五色の滝などがあります。具体的には甲津原に向かうトンネルの手前です。曲谷、甲賀、吉槻、上板並、下板並、大久保、小泉に供給します。

 ここも地質は花崗岩で、曲谷が石臼の採石場であったことがそのいい証拠です。昔,曲谷は良質の石臼の産地でした。水質は硬度10くらいの軟水です。



春照と山東町間田の間にある「伊吹町簡易水道水源地」です。山東町や長浜に行く時によく利用する道のわきにあります。近くには「臼谷の湧水」といわれる湧き水があります。ここから下記の配水池に運ばれます。

 昔(3億年前)は海底火山として誕生した伊吹山ですが、その上にサンゴ礁が発達しそれが石灰岩になりました。その後伊吹山は隆起したため、硬度100前後と硬水に近い水質です。


大清水にある「伊吹町簡易水道第二水源地」です。弥高川の近く、ちょうど大阪シーリング第2工場の向かいにあります。ここからも下記の配水池に運ばれます。こちらも硬度100くらいの水質です。


弥高交差点付近にある「伊吹町南部低区配水池」です。ちょうど伊吹ハムの向かい側にあります。上記の2ヵ所の南部水源地から集められた水は浄化されて、伊吹、上野、弥高、春照、高番、杉沢、村木、大清水、上平寺、寺林、藤川に給水されます。


おいしい伊吹の水


                         4年   畑●ひ●る

 私は、一学期に曲谷浄水場に行って水について学んできました。私が一番心に残ったことは、みんなにおいしい水を飲んでもらえるように苦労をしててくださる高木さんと的場さんです。
 それまでは、ただたんに何も考えないで水を使っていました。でも、高木さんたちかにお話を聞いて学習してからは、私はもったいないことをしたなと後かいをしています。曲谷浄水場では、着水せいへ、ダムから水が流れてきていて、ちんでん池では大きなゴミを取っていました。ちんでん池の高さは3mくらいでとても高いところでした。私が
「えっ。」
とおどろいたのは、ろか池でした。ろか池では、砂でこまかいゴミを取っていました。とてもきれいな水でした。私は
「もう、のめるのかな。」
と思いました。でもまだのめませんでした。
 最後は高区はい水池で、ばいきんを殺していました。だぐ時計というので、水のよごれぐあいを測ってくれました。私は、
「さすが。だから伊吹の水はおいしいんだ。」
と思いました。なぜかというとよごれぐあいが0.1というのでもじゅうぶんおいしいけれど伊吹町の水は、0.004というのでとてもおいしいらしいです。だから私は
「おいしいんだな。」
と思いました。私はこの勉強をして水のことが知れてとてもよかったと思いました。
 これからは、水を大切にせつやくをして、むだ使いは、やめようと思います。

 2002年度 第4学年 学級文集 たけのこ ぐんぐん 


2)水質

水質については、伊吹町水道係の方より、資料をいただきました。

おいしい水といいっても、味覚にはそれぞれ個人差があり、一概には定義づけできません。しかし一般においしい水の条件とは次のように言われています。

●ミネラルが適当に入っていること・・・硬度10〜100
●炭酸ガスが少量含まれていること
●異常な味や臭いがないこと
●やや酸性の水
●水温が10〜15℃であること
このような条件が揃うと、大体おいしい水と感じるそうです。

 厚生労働省が出しているガイドラインを、伊吹町の水と比較してみますと、残留塩素物、過マンガン酸カリウム消費量、臭気度、残留塩素、水温ともに十分適合しています。またカルシウム分等を意味する硬度ですが、甲津原、北部水源は硬度10前後、南部水源は硬度100前後となっています。

硬度=カルシウム濃度×2.5+マグネシウム濃度×4
*日本では一般に、硬度が100未満のものを軟水、それ以上を硬水と呼びます。また、硬水の中でも硬度100〜300程度のものを「中硬水」と呼びます。国産のミネラルウォーターのほとんどは10〜100mg/Lの軟水で、日本人がおいしいと感じる水は日ごろ飲み慣れている軟水でしょう。欧州産のミネラルウォーターは硬度が高いものが多く、慣れないと飲みにくく感じることがあるようです。

味を決めるミネラル
カルシウムイオン : 適量であれば、喉越しが良く、甘味も感じるが、多すぎると舌に重く感じる。
マグネシウムイオン : 少なければ甘味を感じるが、多量に含まれていると、苦味や渋味が強くなって決して美味しい水とはいえなくなる。
ナトリウムイオン : 多量で塩味、少量で甘味を感じる。
カリウムイオン : 多量で塩味、少量で甘味を感じる。
塩化ナトリウム : 塩味
硫酸ナトリウム : 渋味
重金属イオン : 渋味・金属味
マンガンイオン : 苦味

硬度別に適した利用法

硬度

利用法

ミネラルウォーターの例

50以下

日本茶、コーヒー

屋久島縄文水など

50〜100

炊飯、和食料理に最適

黒岳名水、六甲のおいしい水

100〜200

洋食料理

ヴァルベールなど

200〜500

飲用

ペリエなど

500以上

ミネラル補給

ヴィッテルなど

 硬度に関していえば、伊吹町の水道水は北部で低く(軟水)、南部で高い(中硬水にちかい)といえるでしょう。数値だけを見て結論づけることは難しいですが、飲むにはおいしい水といっていいのじゃないでしょうか。

ただ問題は、お茶やコーヒー、日本料理、洋食料理として使うときに、素材の味を十分に引き出せるかどうかということも重要なポイントであることです。日本の平均的な水道水は軟水であるため、まろやかな味わいを好むのであれば、軟水指向ということになるでしょう。

伊吹町でフランス料理を営むベルソーの松田さん(ソムリエ)に、伊吹の水の使い方についてコメントをいただきました→ここをクリックしてください


3)医学的話題・・・カルシウムと結石の関係

伊吹診療所に受診している尿管結石、腎結石の患者を、紹介状データ、患者サマリーデータから検索し、抽出しました。

尿管結石受診患者数

平成4年

5年

6年

7年

8年

9年

10年

11年

12年

13年

14年

合計
患者数

24人

 診療所受診の対象範囲が人口3000〜4000人であり、若年者は直接救急センターや泌尿器科を受診されるかもしれませんが、中年以降の人はだいたい把握できているのではないかと考えられます。従って尿管結石発症はこの人数の倍いるとしても、人口の1%前後であると考えられ、特に多いとはいえないのではないでしょうか。


参考:最近ではカルシウム摂取が尿管結石を予防するとされています

尿管結石の予防

 尿管結石や腎結石は、シュウ酸カルシウムの結晶でできている場合がほとんどです。これは、食べ物から取ったシュウ酸が尿に出て、腎臓内でカルシウムと結合してできます。いったん出来たシュウ酸カルシウムは溶けない為、薬で溶かすことは出来ません。予防には、シュウ酸の多い食べ物を取る時はカルシウムを一緒にとって、腸から吸収する前に中和してしまうのが有効です。シュウ酸の多いコーヒー、紅茶にはミルク(カルシウム)をたっぷり入れる。ほうれん草、小松菜、たけのこのおひたし(シュウ酸が多い)には、鰹節(カルシウムが多い)を十分にかける。などの工夫をするだけで、結石の再発はかなり防げます。なお、お好みで、コーヒーに鰹節を入れても、おひたしにミルクをかけても構いませんが、味は保証しません。シュウ酸の多い食べ物とカルシウムは同時に取らないと予防効果がありません。1時間以上間をあけて別々に取ると、かえって尿管結石ができ易くなる恐れがあります。御注意下さい。(結石の成分が、尿酸やシスチンなどの特殊な成分だった方は、ここに書いた方法では予防できませんので、医者の指導に従ってください。)
   (出典:サザン・クリニック横浜 山岸先生  )

尿路結石の予防

  尿路結石の約80%はシュウ酸カルシウムという成分を主に含みます.予防のポイントは尿の停滞を防ぐことと、シュウ酸の尿中排泄を減らすことです.具体的には、まずなんといっても水分を多量に摂取し、できるだけたくさんおしっこを出すことです.一日の尿量の合計が 2リットル以上を目安とも言われています.ただし、心臓疾患や腎機能障害のある方は、多量飲水する際には必ず主治医にご相談下さい.昔からよく結石にはビールがよいと言われています.しかし、確かにビールには利尿作用がありますが、その含有成分から考えると積極的にはお勧めできません.以前は、カルシウムを多く摂ると結石が出来やすいと言われており、特に長浜周辺は、伊吹山系の石灰分を多く含む水を飲むので、結石患者が多いという話をよく聞きます.しかし近年は、カルシウムを摂取した量が多いからカルシウム結石が出来やすいという説は否定的であり、逆にカルシウムを多く摂取したほうがシュウ酸の尿中排泄を減らし、結石が出来にくくなるという報告もみられます。現在では、結石予防のためにカルシウムを制限する必要はないと考えられています.
      (出典:市立長浜病院泌尿器科 棚瀬先生 )


まとめ  

1)伊吹町には、4つの水源があります。いずれも伊吹山系の源流の水(地下水)といえます。

2)甲津原、北部水源は、硬度10程度の軟水。南部水源は硬度100前後の中硬水に近い水質です。おいしさの定義づけが難しいのですが、厚生労働省が出している「おいしい水の基準」をほぼ満たしています。

3)尿管結石の患者さんは、伊吹の水を原因にする事がありますが、最近ではカルシウム濃度と尿管結石との関係は否定されています。